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「あ、名前ちゃん。丁度いいところに。」

「何でしょう」

大王様にお声を掛けられました。


♂♀


大王様曰はく、急な書類が届いたので、出来るだけ早く鬼灯様にお渡ししたいとのこと。
しかし、今、鬼灯様はテレビ局にいらっしゃるそうなので、お渡しできないのだとか。
人手も足りないので、どうしようかと悩んでいるところに私が通りかかったので、私にお声を掛けたそうです。
私は、閻魔殿でのお仕事が終わったので阿鼻に帰るところだったのですが、そういうことなので、少し寄り道をすることになりました。

それにしてもテレビ局ですか。
有名人に会えたりしちゃったりするのでしょうか。
ちょっぴりワクワクしながら、テレビ局の入口を通過します。
受付に行けば、鬼灯様がいる場所まで案内して頂きました。
あ、見えてきました。あれは間違いなく鬼灯様です。
案内して頂いた方にお礼を言って、鬼灯様の下へ駆け寄ります。

「鬼灯様」

「苗字さん?どうしてここに…」

「大王様のお使いです」

抱えていた書類を鬼灯様に差し出します。
そこで気付きました。
直ぐ傍に、私の大好きなピーチ・マキさんが居たことに。
鬼灯様の手に書類が届く前に書類から手を離し、代わりにマキさんの手を取ります。
後ろでボスンッと書類が落ちる音がしましたが、聞かなかったことにしましょう。今はそれよりも、私の思いをマキさんに伝えるのが優先です。

「好きです!」

「えっ!わ、私のこと!?」

「あなたはまた…、…唐突にものを言うのを止めなさい。マキさん、これはファンという意味です。」

「はい、ファンです!」

「あと書類を落とさない!」

「はい、すみません!…あいたっ」

後頭部を叩かれました。叩かれたところを押さえてうずくまります。
こんなことをするのは鬼灯様だけです。最近、よく叩かれる気がするのは気のせいでしょうか。
マキさんが心配して「大丈夫ですか?」と声を掛けてくれました。
「大丈夫です」と返して、顔を上げます。マキさんが見えました。やはり可愛いですね。テレビで見るよりも可愛いです。
あ、猫又です。マキさんの後ろに、カメラを持った猫又がいます。私、猫も好きなんです。するりと猫又を持ち上げて腕の中におさめます。

「にゃ、にゃにすんだいお前さん!?」

「鬼灯様、猫又です。可愛いですよ」

「苗字さん、はしゃぎすぎです。落ち着きなさい。でも、その猫はもう少しそのまま押さえといて下さい。」

この後、鬼灯様が「もういいですよ」と言うまで、猫又さんの肉きゅうを堪能させていただきました。ふにふにしてて気持ちよかったです。

鬼灯様は猫又さんに携帯を渡すと、「戻りますよ」と私に声を掛けて、その場を離れていきました。
名残惜しいですが、私もマキさんと猫又さんに別れの言葉を告げて、鬼灯様の後を追いかけます。
姿が見えなくなってしまった鬼灯様を追って、突き当たりの角を曲がると、誰かに腕を掴まれました。
少し驚きながら顔を上げれば、口の前で人差し指を立てている鬼灯様の姿が。
状況がよく分かりませんが、取り敢えず、お口チャックを自分に強いて、鬼灯様の隣に並びます。

「帰らないんですか」

「まあ、少し待ちなさい」

キセルを取り出しながら、鬼灯様はそう言いました。
うーん、分かりません。何かイベントでもあるのでしょうか。
しかし、その疑問はこの後直ぐに解決されました。

廊下中に先程の猫又さんの声が響き渡ります。
その内容はマキさんを使って鬼灯様のゴシップネタを作り上げようというものでした。
猫又さん、記者だったんですね。カメラを持っていたのにも納得です。
記者という仕事は、締め切り前は大変だと聞きます。相当焦っていらっしゃるようですね。
それにしても、いくらお仕事とはいえ、少しやり過ぎな気も…。いえ、それ以前に、一体鬼灯様はあの猫又さんに何をなさったのでしょう。相当恨みを買われているようですが…。
こっそり鬼灯様を見上げてみれば、こちらはこちらでとてつもない黒い気をまとわれていました。怖いです。鬼灯様は分かっていて、これを待ち伏せていたのでしょうが…、嗚呼、内側の感情が表ににじみ出ているのがよく分かりますね。
今度は自主的にお口チャックを自分に強いましょうそうしましょう。
触らぬ鬼神にタタリ無し、です。





この後、私は何事もなく無事に阿鼻地獄に帰れました。



ニャパラッチは心に重大な傷を残した模様です。
ヒロインが来たのは、だいたい小判さんが鬼灯様に携帯ボッシュートされたあたりかな。
ヒロインもマキちゃんのメアドゲットしてもらおうかと思ったのですが、如何せん都合が良すぎるので止めました。
犬派より猫派な私ですが、鬼徹では、アニマルsの中でシロが断トツで一番です。

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