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□消毒
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ーーーーーーしまった。
菊田和男は目の前の光景を見てその時改めてそう思った。
同時に全速力で対象に駆け寄る。
「ねー、いいじゃん。行こうよ。」
「…だから、行かないってば。」
「そんなこと言わずにー」
「…ちょっ…」
菊田の目に、男の手が細い手首を掴む光景が入ってくる。
その間に入り込むように、彼女の前に体を入れ込み、彼女を自分の後ろに隠すように移動させた。
「…きくた…」
玲子は明らかに安堵したように大きな背中を見つめて息をつく。
「なにをしている。」
怒りに満ちた低い声に、嫌な予感が頭をよぎる。
もちろん、すでに声をかけてきた男も、目の前の異様な雰囲気に飲まれて怖じ気づいているが、この男の怒りがそれでは治まらないことなど容易に想像がついた。
玲子は、相手に向かって伸びようとする菊田の手を掴み、自分の方へと体を向けさせる。
「菊田、大丈夫だから。」
ぎゅっと菊田の右腕を両手で握りしめる。
その間に声をかけてきた男は姿を消し、それを確認した後に玲子は手を離した。
「…菊田…?」
「いきましょう。」
すぐにタクシーを止め、ドアの中に押しこめられる。
なんの会話もないまま菊田の家までつくと、そのままベッドに押し倒され、組敷かれた。