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□姫川ふぁん倶楽部#4〜ストッパー石倉〜
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「お早う。」
十係に足を踏み入れた瞬間、おぞましく淀んだ空気に石倉保は包まれた。
【姫川ふぁん倶楽部♯4〜ストッパー石倉〜】
菊田和男に目をやると、案の定、その空気は彼から発せられているもので。
どす黒いものがメラメラと彼の背中から噴き出していた。
手はペンを持ち書類に向かっているものの、彼の目線の先には、これもまた石倉の予想通り、十係のマドンナ、姫川玲子。
(…と、今回は今泉係長か。)
さすがにこれは割って入れないな。と、思わず苦笑する。
昨日、日下主任の時は、背後霊のように後ろにぴたりとくっついて終始威嚇していたが、今回はそういう訳にはいかないか。と理性が効いている菊田に少し安堵した。
部屋を見回し、まだ日下、葉山、湯田が出勤していないことを確認すると、再度姫川と今泉、そして菊田に目線を戻す。
「そうか。じゃあ許可しよう。」
「有難うございます!」
何やらお許しが出たようで、笑顔を見せる主任。その笑顔に鼻の下が明らかに伸びきっている今泉係長。そしてどす黒いオーラが今や天井まで達する勢いの菊田。
そろそろヤバそうだ。と直感的に体が菊田の席へ進む。
わなわなと震える菊田のペンの先に目をやると、紙に“暇泉”、“エロ泉”、その他確実に処分対象となるであろう単語が書きなぐられていた。
しかも筆圧が強すぎてペン先が壊れ、ダイイングメッセージのようになっている。