あい__

□今年2回目の雪の日。
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―――バサッ



突如、ドア付近で何かが落ちる音がした。



亮ちゃんは見開き、固まってその物音の方を見ている。



まさか。

胸が少しざわつく。


…いや、違うやろう

と、静かに後ろを振り返った。




……予想的中。



ふるふると震えながら下を向いている、ヤスの姿があった。

おそらく、泣いているのだろう。



ヤスは涙で濡れた顔を上げ、ゆっくりと口を開いた。


青「…僕、もうやっぱり我慢でけへん…っ。…忠義ばいばいっ」


指にはめられていた指輪を俺に投げつけ、涙を拭いながら去っていった。





いつかは、
こうなると薄々気付いていた。



ヤスがこのことを知っていて毎晩、泣いていることだって知っていた。


でも、知らないふりをした。



だから、抱きしめてやれなかった、涙を拭ってあげられなかった。



亮ちゃんとの身体の関係も、俺がヤスの優しさに漬け込んでいたせい。


俺から離れて行かないだろう、という甘い考えが頭の隅にあった。



こうなって、
楽になったのかもしれない。




床には、パックから飛び出した、沢山の散乱した苺。


ヤスにとって、唯一の楽しみだったのだろう。

そんな楽しみも奪った、俺。




投げ捨てられた指輪を拾い、
裏に刻まれた文字を見た。


“Forever love.”


ヤス、約束破ってごめんな。




俺なんかより
ええ人見つけてや。

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