。。忍(長編)。。
□先生のたまご、先たま!!
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先生のたまご、先たまとして忍術学園に行く数日前のこと。
山田ゆりは、おそらく忍術学園の生徒であろう子たちに出会った。
綺麗な満月の日だった。
忍者は月明かりを嫌う。忍びこむとき邪魔だし、非常に危険な敵でもあるからだ。
〈はぁ…先延ばししないでさっさとやれば良かった…〉
こんな日は危険…ということは、ゆりも重々承知の上だった。
しかし、教育実習の準備等々…いろいろ追われ、後回しにしていたのだ。
〈明日期限なのすっかり忘れてた…
まぁ、ドクタケ相手だし余裕かな。
でも油断は禁物。あいつらもやるときやるし…〉
ゆりの忍務は、ドクタケがある城へ密書を届けるのを阻止し奪い取るという内容だった。
ゆりにとっては簡単な任務だと頭に言われ、普段はペアで行動するが今回は1人での忍務だった。
近くの茶屋で仕入れた情報は『子の刻、この山道を通る』ということ。
月明かりから身を隠しながら、標的を待つ。
なるべく背の高い木に腰掛けてあたりを見回していた。
さっきまで誰もいなかったはずなのに、急に誰かの気配がした。ゆりは目を凝らしてその気配を探った。
〈いたいた。隠れてるつもりだけどこっちからは丸見えだよ♪
ドクタケ…ではないし、他の城…ってわけでもなさそう…
雰囲気的に、私と同じで誰かを待ってる…?〉
風が強く吹き、思わず目を細めてしまいたくなるのをこらえていると、足音…しかもバカでかい足音が聞こえてきた。
音がする方を見てみると、3人の男の子が走っていた。
〈こんな遅い時間に村の子供たちが出歩くわけない
この近くって確か…忍術学園があったはず!
忍たま?にしては足音が大きすぎ。1年生…か…〉
カサッ
本当に本当に小さい音だった。
足音でかき消されるような小さい音だった。
しかし、ゆりは1里(約4キロ)先の物音すら聞き分けることができるため、その音にも気がついた。
音の方向を見ると、先ほどの気配の主が身を乗り出して心配そうに3人の男の子を見ていた。
〈ふーん。忍術学園の先生ってとこかな〉
「待ってよ〜乱太郎〜きり丸〜…」
「頑張って走るんだしんべえ!!」
「やばい…追いつかれるぞ!!」
3人の男の子とたちは誰かに追われているようだった。後ろに目を向けたゆりは驚いた。追標的がいたのだ。
〈さて…どうやって盗ろうか…〉
様子を伺っていると、風と一緒に火縄の匂いが漂ってきた。匂いの主を探ろうと、ゆりは目を凝らした。
3人組からも、先生らしき人物からも離れたところに火縄銃を持ったドクタケ忍者が見えた。
〈んーと…あれは雷鬼…だっけ?確か火縄の名手とか誰かが言ってたな
あの忍たまたちを狙ってるみたいだけど。さて、どうしようかな…〉
「お前ら…待て〜…はぁはぁ」
ゆりは雷鬼から目を離し、走っているドクタケ忍者に視線を移した。
今にも倒れそうに、ぜーはーぜーはー言いながら走っていた。
忍者のくせにへばっているとは、さすがドクタケ忍者。
〈本当にこいつが密書持ってるの?
ってか、なんで忍たま追っかけてるの?
まぁ追っかけてるのはどうでもいいとして…
雷鬼は一体何を…そうか!あんなへっぽこじゃ忍たまを捕まえられない!
だから火縄であの忍たまたちを!!〉
先生らしき人物が火縄銃の存在に気づいたが、火縄から距離もあるため今からでは間に合わない。
ゆりは手裏剣を取り出し、雷鬼に向かって放った。