。。忍(長編)。。

□先たまと6年生!!
1ページ/11ページ


ゆりと文次郎は、保健室から忍たま長屋の文次郎の部屋へと移動した。
保健室から腕はつかまれたままだったが、ゆりは何も言わなかった。
力任せではなく、そっと優しく掴むその手に少しドキドキしていた。

〈…少し大きくなったな、手。
身長だって、2年ですごく伸びたみたいだし。
私も、少しは成長しただろうか…〉

文次郎がゆりの腕を離した。
離された腕にもまだ温もりが残っていて、そこがすごく熱い。

「着いたぞ」

文次郎の声にハッとし顔を上げた。
そこには、ゆりと文次郎が4年間過ごした部屋があった。

「ほら、来い」

戸を開け、先に中に入った文次郎に手招きをされる。
部屋に入った瞬間、ゆりの鼻に懐かしい匂いが届いた。

「…文次郎の匂いがする」

「い、いきなり、お前は何言ってんだ!!」

真っ赤な顔でゆりを見る文次郎に、ゆりはきょとんとした。
頭には?マークが並んでいるようだ。

「え?だって匂うもん。昔と同じ…
あ、でも今は少し違うかも。違う人の匂いもする」

そう言って、ゆりはクンクン鼻を動かしていた。
ゆりの匂いをかぐ姿に、文次郎はあきれた顔で言った。

「お前は犬か!?
はぁ…。しかし正解だ。今は仙蔵と相部屋だ」

そう言ったところで、文次郎は床に腰をおろした。
そして四つんばいになりながら、目の前に少し距離を開けて座布団を置き、ポンポンと叩いた。

「まぁ、座れ」

ゆりは少しムッとした顔で座布団をどかして、昔よく自分が座っていたように文次郎との距離を詰めて座った。
思わず文次郎は後ずさった。その行為に、ゆりはますます腹を立てた。
ゆりのただならぬ様子に、文次郎は少し慌てた。

「な、なんだよ」

怒っている理由を聞いたものの、ゆりは一向にこちらを向かず頬を膨らましていた。
しばらくの沈黙の後、ゆりはやっと口を開いた。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ