。。忍(長編)。。

□先たまと6年生!!
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「なんで座布団置くの?しかも少し距離あったし…」

「それは、お前が一応客人だからだろ」

「腕は痛いほど馬鹿力で掴んだくせに、客人だとか言うな!」

「それは、すまなかったと謝っただろう!」

「俺とお前の仲だろ!?いまさら客人扱いすんな!!」

「俺とか言うな!お前は女だろうが!」

「しょうがないだろ。お前と…みんなといるとつい出ちゃうんだ」

ゆりは、まるで叱られた犬みたいにしゅんと首がうなだれた。

〈そんな顔するな、バカタレ〉

文次郎はゆりの顔を見ることができなくなった。
2年ぶりに会ったゆりは、想像以上に美しく成長していた。
凛としていて、たまに妖艶で、でも少しあどけなさも残っていて…

自分のことを見てくれない文次郎に、ゆりはため息をついた。
そして、自分がここに来た用事を済ませなければと思った。

「もういい。で?話ってなんだよ」

「あー…その…」

文次郎は口をもごもごしながら、頭を掻いた。

「保健室での威勢はどうした?」

ゆりが鋭い目つきで文次郎を見るものだから、負けじと文次郎も鋭い目つきを返した。
そして、意を決して尋ねた。

「…なんで教生として来たんだ?」

「来ちゃ悪い?」

「悪くはないが、なぜなんだ?」

「別にいいでしょ。来たかったの」

「答えになっとらんだろうが!!」

「十分答えになってんだろ!!」

「なっとらん!!」

「なってる!!」

ふーっと息をついてお互いにらみ合った。
とめてくれる仙蔵はいないため、このままでは「なってる」「なってない」の言い争いになってしまう。

〈なんで来たんだよ…ゆい。
俺は、お前を追い越せない自分を見せ付けられたみたいで…正直ツライ…〉

〈なんでそんなこと聞くの…文次郎。
私は、みんなの様子を見たかっただけ…
卒業しちゃったら、会えなくなるかもしれないんだよ?
だから…がんばって会いに来たのに…〉

お互いの気持ちは通じ合わないまま、時間だけが過ぎていった。



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