inazuma/GO*long

□ならないオルゴール(3)
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その日の夜、フィフスセクターからの電話が切れてから20分――――倉間は久遠監督によって発見され、病院へと運ばれた。
久遠監督に電話したのは南沢だ。




『…どうした、南沢?』
「倉間が…、倉間がフィフスセクターに…」



南沢は独りベッドに背を預け、ならない携帯電話を見つめていた。
助けに行きたかった。
自分で倉間を探し出したかった。

でも、それができなかった。

南沢は決して倉間を見捨てたわけではない。
今一番愛しているのは倉間。
だからこそ南沢は恐れていた。
彼が、――――倉間典人が自分を恨んでいるのではないかと。
憎んでいるのではないかと。
倉間が自分を見る目が、怒りと憎しみだったら―――と考えてしまう。

逃げた、そう南沢は分かっていた。
倉間の命の危険であるというのに、足が動かなかった。
背筋が凍り、両足が何かに縛られるかのように地面に張り付いていた。
そして何度か南沢は自分の拳を地面にたたきつけた。その衝撃で右拳からは血が滲み出ている。


「・・・・俺は、」

ナンノ タメ ニ ココ ニ イル ンダ ロウ




それから1時間後、倉間の手術が終わったと監督からの電話が部屋中を鳴り響いた。
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