僕と君との子守唄

□第1章 僕等の出会い
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春 side


「あっつ…」


暑い。
とにかく暑い。
もう9月に入ったというのに。

夜だというのに鳴いている馬鹿な蝉を睨みながら、俺は自転車に跨った。


「ったく、なんでこんなに暑いんだよ……」


愚痴を言いながら、ある公園の前を通り過ぎた時だった。


人……?


多分、男。
俺より小さいだろうけれど。


考えるより、なぜか身体が先に動いた。
ソイツに引き寄せられるように。


「…おい」


ブランコに俯きながら座っているソイツに声をかける。
俺の声にびっくりして彼は、ばっ、と顔を上げた。

瞬間、俺は目を少し見開いたと思う。


それは、彼が、

とても綺麗な顔をしていたから。


月明かりに照らされた、端正なその顔。
明るめの茶髪の耳付近に少し入れられた、赤いメッシュ。
女の子のような大きな瞳に華奢な身体。
暗いせいでよく分からないが、多分かなり色白だろう。


でもそれよりもっと驚いたのが、


着ている制服はところどころ破れていて、少し血がついていた。
頬にはいくつか掠り傷らしきものがあり、血が出ていた。


「おまっ…ど、したんだ?」
「……」
「家は?んな時間に何してんだ?」


携帯を出して確認をした時刻は、11時43分。


「おい、お前きいて…」
「俺に帰る場所なんてない」
「は?」


彼は立ち上がって公園から出ようとする。


「ちょ、あぶねぇって!」


たった瞬間、よろけた彼を支える。


「お前絶対大丈夫じゃねぇよ」
「いや、大丈夫だから…」
「いいから自転車の後ろのれ」
「え、ぁ、でも」
「はい決定〜…」

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