一冊目:物語

□フォレスト
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パシャッ

カメラのシャッター音が河原で響いた
私はこの音が大好き。

レンズの中を覗くとそこには景色が映っていて
イラストを描くように構図を決める

「ここだ…」

そして指でボタンを、押す。

パシャッ

ごく普通の高校に通う渡辺杏里16歳は、普通の女の子たちはカラオケや歓楽街に行く中私はずっと公園や河原、山などに行ってはこの愛用のカメラを首からぶら下げてシャッターを切るというなんとも暗い青春を送っています。
カメラマンになりたいとは思うけどまだまだ遠い夢で、せめて少しでもカメラや写真に関係するお仕事につけたら良いほうだなぁなんて現実を見始める頃になりました。
もっと上手く撮れるようになるといいなぁ…。

杏里はセミロングの黒い髪を風で浮かせながらカメラのデータをチェックしてニコッと満足そうに笑った。

「んり〜〜…杏里――!」「へっ?」
私は驚きながら振り返る、慌てたのでカメラを落としそうになってしまった…危ない…。
杏里はホッとしながらカメラを抱きしめた。

「り、凜!」杏里の顔が明るくなる。
桜井凜。彼女は同じ高校に通っている、ううん、ずっと小さいころから一緒に居て私の数少ない友人の中で私は一番仲がいいと思っている子。
凜は男の子と間違われるようなボーイッシュな子で髪は前髪とサイドが男の子より少し長い気がするくらいなだけのベリーショート。
何より目が惹かれるのはその美しい顔。
まつ毛が長くて切れ長の輝く綺麗な目をしていて鼻なんてすごく高い。
私が写真を撮るときに被写体にしたいナンバーワンどんな有名人達よりも撮りたいと思える、そのくらい美しいって言葉がふさわしいの。

「また写真撮ってたの?今日天気いいもんね。」

クスクスと笑う凜に杏里は「う、うん、綺麗だったから思わず…。」にこっと微笑みながら答えた。
杏里は凜の格好を見た。
ただの白いシャツに青色のハーフパンツ姿。

「凜はまた走ってるの?毎日すごいね…。」
凜は運動がすごく得意で丁度良いくらいに筋肉がついていてほっそりとしていて私よりすごく背が高い。
私も背の順ではクラスの中くらいに入るほどなのに凜は男の子とそんなに変わらないくらいに高い。
私は親にバスケとか運動系のクラブに入らされていてその影響で背が伸びたのだけれど…凜はそういった事はしてないのにこんなに高くてうらやましいなぁ…。


「なーにじろじろ見てんのさッ」そういうと私の手から凜は笑いながらカメラを奪い取った。

「わっダッダメ!」
「良いだろ〜?空とか私も見たいんだって」

凜はカメラを取ってプレビューを見ていく。
ま、まずい…これはやばい!杏里の顔がサッとこわばる。

「だっダメだってばぁ!ダメダメ!返して凜ッッ」

最初は手を上に伸ばして「取れないだろ〜」なんてからかっていた凜だが、杏里の泣きそうな目を見て

「ちょ、泣くなって!ごめんごめん、でも空の写真見ただけだからさ…!」
カメラを杏里の手に返すと、ぽんぽんっと軽く頭を撫でた。

「う…な、泣いてないよぉ…。」カメラをギュッと抱えると今度は取られまいとバックの中にしまいこんだ。
「そんなに隠すことないのになぁ…。相変わらず綺麗だったよ?杏里の写真さ。」
ニコッと爽やかに笑った。

「で、でも突然見るのはよくないよ…。」嬉しそうに一瞬したが、すぐに口を尖らせた杏里に
「ごーめんって、今度ジュースでも奢るよ。そんじゃ、私もうそろそろ走って家帰るからさ、じゃぁね!」

もう一度さっきと同じように杏里の頭をぽんぽんと撫でると、手を振りながら走って行った。
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