一冊目:物語

□フォレスト
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さっきすごく綺麗な笑顔だったなぁ…カメラしまわなきゃ良かったよ…。
「はぁ…。」
不満そうなため息をつきながら杏里はすぐ近くの公園のベンチに来て、荷物を横に置いて座った。

それにしても危なかったなぁ、いきなりカメラ取るんだから…。
これからはちゃんとデータ写し変えてからにしなきゃ…。

杏里はカメラを取り出すとプレビューを見た。
さっき撮ったばかりの空
この前撮った近所の子供たち
凜の家に遊びに行った時の飼い犬、サクラ



……

走ってる凜…
お菓子を食べてる凜…
お昼寝してる凜…。

「本当に良い顔するなぁ…凜……、大好き…。」
杏里は無意識のうちにそう呟いてニコッと笑った。



「はッッ!ちっ違う!りりり、凜がスキじゃなくてその被写体としてね!撮るのが好きで!あぁうああああ……」


お昼過ぎの公園で一人の少女は苦悩に振り回されていた。
幸せだけれど切なすぎる苦悩に少女はずっと悩んでいた。





「ふわぁぁ……。」
ご飯を食べた後ってどうしてこんなに眠くなるのかなぁ…薬でも入ってるのかっていつも心配になるよね…。
杏里は自室へ入るとカメラと一緒にベットに横になった。

正直私は…凜への気持ちが分からない。
家が隣どうしでずっとずっと小さいころから仲の良かった私たち。
凜は女の子だけどいつも私を守ってくれて運動もできてすっごくかっこいい…。
すごく厳しい私の親でも認めてくれるほどの唯一の子だった。
小さいころはずっと一緒にいたけれど高校に入ってからは…
クラスは同じだけどやっぱり他の子からも人気で少し遠くなっちゃったかな。

別に凜に私と一緒にいなきゃいけないなんて言う決まりはない…だけど
最近私は他の事凜が一緒にいるとすごく嫌な気持ちになることに気づいた。
すごく気持ちがムカムカして…悲しくなる。
普通の友達同士なのにこんな風に思うなんておかしいとは思う、けど
けどどうしても治まってはくれなかったこの切ない気持ち
凜は、凜は私の事をどう思っているんだろう…やっぱり普通の友達なのだろうか?
「好きだけど……」
ハッとしてすぐに首を振って「好きなのは友人としてだよね…そうそう、きっと私は男性経験がないから男の子っぽい凜にそんな風に思っちゃうんだ。あーぁ…ダメだなー私。」



普通ではないこの感情を私は押し殺そうと必死だった…。
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