So Fine 2

□43話
1ページ/4ページ




無事にジンギを連れて帰れた事で、緊張が一気に解ける。

安心感と疲労に酔いも加わり、一気に体が重くなった。。




シャワーで雑に髪を流し、時間を稼ぐために座ってボーっとしていた。


体の倦怠感と共に、頭が上手く機能しない。

みんなと顔を合わせても、
きっと上手く話せない。






お風呂から上がりリビングに行くと、人の気配は無くなっていた。

今の私には、それが救いだった。



頭に掛けたタオルで髪を拭きながら、ソファの方に歩いて行く。


背もたれに隠れていて見えなかった姿が、近付くにつれ徐々に見えてくる。




寝息を立てながら無防備に眠っている彼を見ると、
幸せな気持ちと同時に、胸を締めつける苦しさが私を覆っていく。






私は自分の部屋に行き、掛け布団を取ってきた。


テミンの胸に降ろした布団を、足下まで広げて掛ける。

掛け終えると、屈んだままテミンの顔に視線を移した。



薄く開いた目が、まどろみは感じさせず、鋭さを持ってこちらを見つめていた。



テミンの顔の方に近付き、床に座って小さく話しかける。

名前「ベットで寝た方がいいよ?」


私を見つめる目、柔らかく尖った唇に
吸い寄せられそうになる。。


テミンの伸ばした手が、
私の頬を通り、頭にかかったタオルを肩に降ろした。

テミン「…髪、濡れてる。」

優しく指で髪を触るテミンに見とれている自分に気付くと、
ハッと目を逸らし、微かな理性を取り戻す。


名前「…そうだね、髪乾かさないと。
そのまま寝るね。 おやすみ 」


私が立ち上がるのと同時に、テミンは体を起こした。


テミン「乾かしてあげる」

上目遣いでいたずらっ子のような微笑みを見せると、
掛かっていた布団を丸めて片手で持ち、もう片方の手で私の手を掴む。


機能しない頭は、断ることもせず、
重い体は、抵抗することもしない。


テミンに手を引かれ、自分の部屋に入っていく。







ドライヤーをセットし、ベットに腰掛けるテミンを横で立ったまま見ていた。


テミンは私に顔を向けると、ニコッと笑って

「こっちおいで」

と足を広げて、ベットを叩く。


引き寄せられるように、広がった足の間に座る。



ドライヤーの温かい風が頭に当たると、
乱暴に髪をかき上げるテミンの手に、笑みが込み上がる。


不器用で一生懸命な手が愛おしくて、
テミンが私に触れている今が、あまりにも幸せだった。




テミンの優しさはいつも通りで、
昼間私がテミンに言い放った言葉も無かったように消してくれそうな、そんな心地良さを感じていた。


名前「…テミナ。…ごめんね。。」


私の小さな呟きはドライヤーの音にかき消される。




心地良い温かさと大好きなテミンの手が、まどろむ意識を遠くへ飛ばしていく。。








薄く意識が戻った時、私はベットに横たわっていた。


目を開けず寝たふりをしていたのは、
テミンの気配がすぐ側にあったから。


テミン「…名前は悪くないよ。…あんな事言わせたのは僕だから。。」



鼻に掛かった細く囁く声も、呼び捨てた名前も、
記憶の奥に閉じこめようとしていた“最後”の秘密を思い出させる。



テミン「…もう少し。もう少し待って。
それまで離れて行かないで。。僕のこと嫌いにならないで。。」




こんなに好きなのに、嫌いになれるわけない
嫌いになれたら、どんなに楽か…




頬を動くひんやりとしたテミンの手に、
おでこに感じた柔らかな唇の感触。




テミン「…好きだよ。」




すぐ側で沈んでいたベットが浮き上がり、電気が消されると、
そっとドアが閉まる音が聞こえた。



閉じていた目から熱い涙が流れ落ちる。


名前「…私もだよ。…私も大好きだよ。」

決して伝わる事のない言葉は、私ひとりの部屋の中で粉々になって消えていく。




.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ