So Fine 2
□46話
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<共同生活24日目>
朝、いつものように5人を見送る。
今日の仕事は午後からなので、それまでの空いた時間に
まず、やらなければいけないこと。
携帯を取り出し、マネージャーさんに電話をかける。
午前の間に、なんとか室長さんと話しが出来るよう時間を作ってもらった。
ビルの前にいる若い女の子たちの間をすり抜け、事務所に入る。
真っ直ぐ受付に向かい、ゲスト用のパスを受け取ったとき
「名前さーん!!」
突然、後方から聞こえてきた声に驚いて振り返った。
名前「吉田さん!」
走り寄って来る吉田さんは、あっという間に目の前に走り着いた。
吉田「名前さん久しぶり〜。
元気にしてた?困ったことなかった?」
息を切らしながら私の両腕を触って、吉田さんは心配そうな顔で覗き込んできた。
そんな様子に胸が温かくなり、私は自然と笑顔が浮かんできた。
名前「はい。おかげさまで元気です。」
吉田「そっか。それなら良かった。
さっきマネージャーから連絡が来てね、名前さんが室長に会いに来るって言うから、何か困った事でもあったのかなぁと思っちゃって。」
私は小さく頭を振って笑顔で返した。
名前「いえ、…ちょっと室長さんにお願いがあって来たんです。」
こうやって気に掛けてくれる吉田さんを見ていると、
帰国を早めてしまうことに、申し訳ない気持ちが湧いてくる。
吉田「マネージャーも先に室長室に行って待ってるって。行こっか。」
私は吉田さんと一緒に室長室へ向かった。
ほんの1ヶ月前、
色んな不安を抱えながら韓国に来て、空港から真っ先に向かった場所。
今、あの日と同じ道を歩いている。
今までとは全く違う世界にいるようで、
不安と恐怖に押しつぶされそうになりながら、この廊下を歩いてた。
今は、ただ進むべき未来に向けて歩いている。
十分夢は見させてもらった。
もう…十分。
室長室のドアが見えてきた時、吉田さんが話しかけてきた。
吉田「名前さん。あの時も…、
テミンにステージに立って欲しいって言ってくれた時も、宿舎に一緒に住むって決めてくれた時も、
いつも名前さんはあの子たちのことを思って考えてくれてた。
だから、きっと……これもそうなんだよね。」
胸が締め付けられる。
私がこれからどんな事を話すのか知らせていないのに、それでも吉田さんは私の決めた事を理解しようとしてくれている。
室長室のドアの前に着き、立ち止まった。
吉田「大丈夫。行っておいで。
あなたの味方はたくさんいる。」
吉田さんを見ると、優しく微笑んで小さく頷いてくれた。
心強い言葉が私の背中を押す。
深呼吸をひとつして、ドアをノックした。
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