So Fine 2

□52話
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「あの子たちに伝えとくことある?」

出発までの時間、吉田さんと並んでコーヒーを飲んでいた。


「……いえ。こんな形で居なくなるんです。
私が言えることなんて、何も無いです。」



どんな言葉を選んでも、テミンの怒った顔、
キボムやジョンヒョンの落胆した顔しか思い浮かばない。


自分はそれだけのことをしたのだから。





名前「契約書にあった通り、今後彼らに関わる事は一切ありません。
…さっき、連絡先も履歴も全部消しました。
日本に帰ったら電話番号も変えるつもりです。」


吉田「名前さん」

呆れた様子と共に、少し強い口調の吉田さんは、「そこまでしなくても」と続けたかったのだろう。




分かってる。

ここで断ち切らなければ。

どこかで小さくでも繋がっていれば、この別れに何の意味もなくなる。




吉田さんはフーッと息を吐き

「…そっか。うん…そうだよね。
テミンの電話しつこそうだもんね。」


無理に納得しようとしているように、何度も頷いた。


吉田「………でも…せっかく仲良くなれたのに。
もう名前さんに会えないってなると…やっぱり、寂しいもんだね。。
……あの子たちの気持ちがちょっと分かった気がする。」


そう言って吉田さんは寂しそうに笑った。




この1ヶ月、吉田さんはいつも気に掛けてくれて、励ましてくれて、理解してくれて…。

名前「ごめんなさい。。
こんなにお世話になったのに…。」

無意識に顔は下がり、手に握ったコーヒーカップに視線が落ちる。


吉田「じゃあ…ひとつ約束して?」

優しく強い吉田さんの声に目を上げた。


「あの子たちが日本のステージに立つとき、絶対見に来て。
ちゃんと、あなたの目であの子たちを見て。
…きっと、すごく楽しそうに笑ってるから。

…大丈夫。すぐには無理でも、絶対大丈夫。
大事なものってそう簡単には無くなったりしない。
頑張れるよ、あなたもテミンも。」



潤んだ目で必死に強く話してくれる。


私は立ち上がり、吉田さんの方を向き深く頭を下げた。



ありがとうございました。


それが言いたいだけなのに、声が思うように出ない。



ポタポタとこぼれ落ちる滴が止まらず、震える喉に嗚咽を押し殺すことしかできなかった。



ふわっと温かい腕が私を包み頭を撫でる。






強くなろう。


こんなに素敵な人たちと過ごした時間に恥じない自分になろう。






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