So Fine 2

□最終話
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どこか様子のおかしい吉田さんを不思議に思いながら、テーブルに置いていた飲みかけのコーヒーカップを片付ける。



突然の訪問も2度目にもなると、心臓が止まりそうになるほどの驚きはなくなった。



それに今日は、
…なんとなく、来るんじゃないかと思っていた。




昨日、自分の口から出てしまった冷静さを失った言葉が、吉田さんに真っ直ぐ伝わってしまったのなら、
それはただ、吉田さんを困らせてしまっただけなんだ。


全てを絶ち、逃げるように出て行った自分が
「会いたい」なんて、
今さらそんなこと、口に出すべきではなかった。



どんなに遠く、手の届かない場所に居ようと、
全身で歓声を吸い込み、楽しそうな笑顔で笑い合う5人の姿を、しっかりとこの目に焼き付けた今、
…今度こそ、言える。





自分の選択は間違ってはいなかった、と。








インターホン音が聞こえると、私は玄関に行きドアを開けた。


名前「おはようございます」

吉田「お、おはよう…」

名前「どうぞ、入ってください。」

吉田「……」


その場から動こうとせず、私と目も合わさず落ち着かない様子の吉田さんに、さっき感じた違和感が再び広がっていく。


名前「……吉田さん?…どうかしたんですか?」


吉田さんの様子に、彼らに何かあったんじゃないかという不安が一気に全身を襲い、
誰かが走ってくる足音がだんだん大きくなってくることなんて、気にも留めなかった。


名前「吉田さん!何かあったんで 」 


言いかけた途端、手を伸ばして押さえていたドアにグッと引っ張られ、バランスを崩した。







開いたドアの後ろから、
その人は姿を現す。







見た瞬間、声も出せず息を吸い込むことも出来なかった。




真っ黒なTシャツ真っ黒なジーンズ、表情を覆う濃いサングラス、深くかぶったキャップから明るい色の髪先がのぞいている。




…それが誰かなんて、すぐに分かる。






吉田さんは体を引き、心配そうな目で見ている。

そんな吉田さんのことを気にかける余裕すら、私にはなかった。




荒く肩で息をするその人は、サングラスを外し、潤んだ瞳を真っ直ぐ私に向ける。


テミン「名前……」



その目も、その声も、
紛れもなく私の知っているテミンだった。


混乱し幻を見ているような感覚でいた中、
向けられる視線と目の前で発せられる声は、私に現実味を持たせる。




長い時間をかけて自分自身に刷り込んできた声が、無意識の頭にこだまする。

…ずっとそうしてきたように。。





(だめ…

近付いちゃ、だめ……)







体が後ずさる。


片足を一歩後ろに下げると、ドアを押さえていた手が離れた。



その瞬間、テミンの目が小さく見開いたような気がしたと思うと、
スッと吉田さんの前へ体を滑り込ませてきた。

玄関に入って来たテミンは、後ろ手でドアを引っ張り、
外に吉田さんを残したまま、

ガチャ…と、鍵を閉めた。






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