So Fine 1

□3話
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開場1時間前。


電話で吉田さんに教えてもらっていた道順で、なんとか関係者入口まで来れた。



吉田「名前さ〜ん!こっちこっち!」


ゲスト用のパスを受け取り、会場内へ入って控え室に行くまでの通路は、
慌ただしく準備に追われるスタッフさんたちで戦場と化していた。


慣れたようにそれらを避けながらサクサク歩いていく吉田さんと違い、
当たる度に、すいません!と頭を下げる私は、なかなか進めずにいた。


そんな私を見兼ねた吉田さんに、
途中にある衣装保管室へ入れてもらい、ここでマネージャーさんが来るまで待たせてもらうことになった。




その間、私たちはお互いの事を話す。


吉田さんは韓国の事務所で働いてる数少ない日本人スタッフの一人らしい。
今回日本ツアーなので同行して通訳やら雑用やらをやっているんだと教えてくれた。


私は1ヶ月前に会社を辞め、今は無職だということ。

辞めた理由は…話さなかった。



吉田「名前さんも韓国語喋れるんですね?
昔住んでた。とか?」

名前「いえ、…ちょっと勉強してるんです。
SHINeeを知って好きになって、韓国にも興味が沸いてきたから。
でも全然上達しなくって。」


それがまさかこんな場所で役立つとは。。









しばらくしてマネージャーさんが部屋にやってきた。

「名前さん、今日は来ていただいてありがとうございます。
席用意できなくて本当にすいません。
後でテミンに挨拶に来させますんでもうちょっとお待ちください。」

それだけ言うと急いで出て行った。







吉田「…あのね、
昨日名前さんがテミンにステージに立って欲しいって言った時ね、失礼な話、この人何言ってるんだろうって思ったの。
私も周りのスタッフもみんな、明日はテミンは出られないものだと決めてかかってたから。
それから、自分なりにテミンにとってはどっちがいいのか、名前さんを送る車の中でずっと考えててね。
後でテミンが自分で出るって言ったんだってマネージャーから聞いて、ホッとしたの。
ツアースタッフとして、何ヶ月も前から準備して考えたステージを中途半端に終わられるのは悲しかったから。
テミンがそんなスタッフの気持ちもファンの気持ちも尊重したからこそ出した決断なんだって、マネージャーが嬉しそうに話してたの聞いて、私も嬉しかったのよ。
この子はいつまでも周りが守るだけの子どもじゃなくなったんだなって。
周りを気遣える大人になってるんだなって、
今回やっとみんな気付いたの。
あなたがテミンを動かしてくれたおかげね」




昨日余計な事を言ったせいでみんなに迷惑かけていると思っていた私は、
吉田さんのその話のおかげでスっと心が救われた。




そんな時コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。





緊張で頭がクラクラする。


ドアが開くと、テミンの顔が見えた。


病院に来た時とは違う
私の大好きな、

”SHINeeのテミン”だった。



頬が上がりニコっと目を細め「こんにちは」と挨拶をしてきた。



あぁ眩しい…眩しすぎる!!!




私は急いでソファから立ち上がり、挨拶を返そうとした途端、
テミンの横から、SHINeeのメンバーが全員、次々と「こんにちは〜」とドアから入ってきた。






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