So Fine 1

□19話
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 キーside


時間を無理矢理作ってまで帰ってきた理由。





ポケットに手を入れ、ソレを取り出す。



協賛していたショップでもらった
綺麗で華奢なタイプのブレスレット。



見た瞬間ヌナが思い浮かんだ。

担当の人にお願いして内緒で買ってきたこれを、すぐにヌナに渡したかった。




かわいい箱でもあれば良かったんだけど。。

メンバーに隠して持って帰る為に、そのままをポケットに入れてきた。

ちょうどいいケースか何かないかと、部屋を散々探したけど
見つからない。


しょうがないと諦め、ブレスレットをまたポケットに仕舞い、
ヌナの部屋へと急いだ。










コンコン


ヌナの部屋のドアをノックする。


……。


返事がない。




コンコン


何度かノックしても一向に返事は聞こえないし出てこない。




…おかしいな
部屋にいるはずなのに。





「ヌナー?入るよー?」

声をかけながらドアをそーっと開ける。






真っ先に目に入ったのは、
パソコンの前の椅子で、小さくうずくまっているヌナの姿だった。


「ヌナ…?」



よく見ると体が震えている。



「!!ヌナっ!!
どうしたの?大丈夫??」


駆け寄って背中に触れると、苦しそうに痙攣していた。


視界に入ったパソコン画面にはヌナの写真が載っていた。
その周りに日本語がたくさん書いてある。




ハッとした。


「ヌナ、大丈夫。大丈夫だから落ち着いて。
聞いて、ゆっくり息するんだ。言うとおりにして…。
…吸って。 …吐いて。 …吸って。 …吐いて。」

小さく震える冷たいヌナを抱きかかえて耳元で呼吸を整えるよう手助けをする。











しばらく僕の声に合わせて呼吸を続けていたヌナは、少しずつ呼吸が整ってきていた。




僕の体に伝わっていたヌナの震えも、徐々に落ち着いてきた。


抱きしめたまま背中を摩りながらヌナの顔色を覗く。

うつろな目から大粒の涙があふれ出していた。


もう一度強くヌナを抱きしめる。







ヌナの持つ苦しみが
全て僕の体に流れてくればいい。




体が接する面を増やしたかった。


そうすれば
少しでも早くヌナの苦しみを、全身で吸い取れるような気がしたから。











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