短編集

□IF…?
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「十五」

「なんだよ」

「バルス!」

「死ね」



今日も懲りずに誠司は俺につっかかり、俺も負けじと言い返す。

入学式の時、なんとなくムカつく奴だなとは思ったが、今ではそれに更に拍車がかかっているのだ。凄まじく。

殴り合いこそないものの、もはやお互いを敵と認識し、顔を合わせる度にいがみ合う始末。

本当に、ここまで相性が悪い奴はそういないだろう。



…ただ、この間八十に言われたことがある。


「それってさ、同族嫌悪ってやつじゃね?自分に似てるから大っ嫌い的な」



断じて違う!!

俺とあいつが似てる?はっ、ないね。俺あんなに性格悪くねぇし、ねちっこくねーし、しつこくねーし、バカじゃねーし←


「「あーあ、なんかムカついて腹減ったから帰りにコンビニ寄ってこ」」

「あ?」

「あ?」


「「…」」


もう一度言っておく。

断じて似てなどいない!


「おい、何ついてきてんだよ」

「は?お前が俺の前歩いてんだしな。どけよそこマヂ」

「あ?どくわけねぇだろ俺はこっちに用があんだよ」

「俺だってそうだし」

「俺の方が先だし?来んならお前コンビニでなんか奢れよな」

「嫌だしふざけんなしむしろお前が奢れし」


まっじこいつ!!

お互いそう言いたげな目で数秒にらみ合ったあと、また一定の距離を保ちながら歩きだした。

俺は背中に誠司の恨めしそうな視線を浴びながら足を進めた。

でも、あれ?

何か今のやりとりの最後の方、デジャヴな気がするような…

んなわけねぇか。




―何故かその距離に、爪の先ほどの違和感を感じながら…―





コンビニについて、俺は店内の物色を始めたけど、誠司は買うものをあらかじめ決めていたらしく、俺より先にレジに向かった。

「はっ、俺の勝ちだしな」

わざわざ振り返ってそんなことを言うあたり、こいつもまだまだ子供だな←お前が言うな


もうひとつのレジに並びたかったが、すでに列が出来ていたため、俺は仕方なく誠司のすぐ後ろに並んだ。

すると、誠司が鞄やら制服のポケットやらを必死に探り始めた。

「おい、何してんだよ」

「…ふ、…れた」

「は?」

「財布、学校に、忘れた…っ」
「うーわ」

「笑ってんじゃねぇよバカ十五!」

「いや笑ってねぇよ、アホだこいつとは思ったけど」

「うっせぇバカ!くっそおおお何も買えねええええ腹減ったああああ」


誠司は落胆しながら店員に詫びをいれて買い物カゴを戻そうとしていた。

俺は数秒考えた後、誠司の手からカゴを奪って自分のものと一緒にレジ台に乗せた。

「これ、一緒にお願いしまーす」

会計を待つ間、俺は誠司の方は見なかった。





「ほら」

二つに分けてもらったビニール袋を手渡そうとするが、やっぱりというか中々受け取らない。

「…どういうつもりだよ」

やっと口を開いたかと思ったらムスッとしたまま憎まれ口。

「別に?お前に貸し作っとくのもいいなって思っただけだよ。」

こう言えば満足か?

「ふん、いかにもお前が考えそうな陰湿な手だな」

そう言って誠司は俺の手からバッと荷物を奪った。

「明日には金返すからな。借りだなんて思ってねぇから」

「現金なら3倍返しな」

「ふざけんな」

踵返して歩き出した誠司の後ろを、今度は俺が一定の距離を保ちながら追う。どうせ途中までは一緒の道なのだから仕方ない。

ふいに、誠司が立ち止まって首だけ振り返った。

「十五、」

「なんだよ」

「バルス!」

「死ね」

「・・・」

「・・・」

「十五、」

「・・・」

「なぁ、」

「なんだよ」





「なんでもねーよ」


そこは普通ありがとうだろうがよ。

さっきと同じようで、なんだか違う受け答え。









また、デジャヴ。

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