短編集
□帰り道
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「あの…」
「?」
「その、なんだ、一緒に帰らないか…?」
「!もっちろーん!」
放課後の正面玄関、五十は壁にもたれながら音楽プレーヤーをいじっていた。
特に音楽を聴いているわけではないが、人を待つ間手持ち無沙汰だったため、ただ画面をスクロールさせているだけだ。
まだ秋といっても、すでにこの時間帯空気は冷たい。
プレーヤーを持つのとは反対の手は、外気にさらさないようにポケットにしまわれたままだった。
「五十さんっ」
待ち人の透き通るような声が、よく反響する玄関に響いた。
五十は手元から視線をあげる。
「中川ちゃーん、おつかれー(´∀`)」
五十はもたれていた壁から離れ、みらいが靴を履き替えるのを待った。
「さ、誘っておきながら、遅れてしまってっ、本当、に、すまないっ」
「大丈夫だからとりあえず息整えな(笑)」
「そ、うだな・・・はぁ、ふぅ」
胸に手をあて、何度か深呼吸して、みらいは背筋を伸ばした。
「授業が終わってすぐに向かったんじゃが、運悪くというかなんというか担任に呼び止められてしまって、無碍にすることもできなくて・・・」
「みらいちゃんは良い子だもんねー(´∀`)俺なら絶対逃げてるから!絶対いい話じゃないし!」
「ふふ、・・・でも本当にすまない。こんなに待たせてしまって・・・」
「大丈夫だってば!俺時間潰すの上手いんだよ〜wwこうやってボォ〜〜〜( ´,_ゝ`)っとしてればあっという間に3時間ぐらい過ぎちゃったりするからね!」
そう言って、変な顔をしてみせれば、一瞬呆気にとられたあと、みらいはいつものように笑った。
「・・・あはは!すごいな、五十さんは!」
「ひひっ、でしょ〜?(。-∀-)フフフ んじゃ、帰ろっか!」
「あぁ、そうじゃな」
「みらいちゃんは電車組?」
「そうなんじゃ、電車で下り線じゃ」
「じゃあ駅までだね^^」
「(そうか・・・五十さんは上り線なのか・・・)」
自転車を引く五十の横を、みらいは静かについて歩いた。
風の冷たさが、少しだけ和らいだ気がした。
余談:実は五十の家は駅とは反対方向。