デスドアオリジナル
□奇跡の拳
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「ところでさぁ…あんたの一週間後の相手ってどんな奴なのさ!」
キリコが尋ねるとマッドは俯き上目遣いになる。キリコはその姿に少なからず苛立ちを覚えた。
「バイソン・ベア…。」
マッドは左右に目を泳がせながら小さく呟いた。
「は?」
「バイソン・ベアって男だよ。世界チャンピオンなんだ…。」
「何?弱っちぃあんたがその牛とか熊とかプロレスラーみたいな名前のチャンピオンと戦うの?」
キリコは神妙な面持ちで訊く。
「うん…チャンピオンからの指名で…僕が…だから大チャンスなんだ!」
「はぁ〜、それって典型的な防衛回数稼ぎね…。」
キリコが腕組みし頷きながら考える。
「絶対勝ちたいんだ!勝って病気のお母さんの薬買うんだ!」
マッドは握り拳を作り、力強く叫ぶ。
「あー、あたいそういうお涙頂戴の話面倒くさくて苦手なんで…詳細パスね!」
キリコがしらけ顔で手を上げる。
「あ…そう…。」
「勝ってチャンピオンになるには早速トレーニング始めるわよ!」
キリコが紙に何かを書いている。
「はい!これをやりなさい!」
差し出された紙に目を通すとマッドは怪訝な顔をする。
「ん…明日のために?ジャブ…を…えー…と…。」
「あ、あんた…まさか字読めないの!?バカなの!?それともアホなの!?」
キリコは驚きマッドを指差し罵倒する。
「いや…そうじゃなくて…。」
マッドは頭を掻きながら困惑していた。はっきり言ってキリコは字が超絶に下手だったのだ。ミミズののたくりのような線が書かれていた。
「つまりねぇ、ジャブってのは左で距離を測ったり牽制するのよ!こうよ!こう!」
キリコは左手をチョンチョンと突き出す。
「ふ〜ん…。」
「これを明日まで500回やる事!わかった?」
「500回!?」
マッドは驚くと自分の左手を見つめる。
「そ!明日までね!明日になったらまた新しい技の練習よ!あたいはいろいろ忙しいからつきっきりで見てられないのよ!じゃーね!」
と言ってキリコは手をひらひらと振り去って行った。
「ジャブ…500回!!」
マッドは黙々とジャブの練習を開始した。