デスドアオリジナル

□奇跡の拳
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その夜、キリコはホテルで食事をしていた。

「相変わらず味気ないわねぇ〜。」
キリコは肉やら魚を頬張りパンを食べるが形ばかりで味は全て同じような薄味だった。
ノスタルジアはその横で固いパンをついばんでいた。

窓際に立ち街を見下ろすとゴチャゴチャと人が溢れていた。

「中にはたまたま流れついた人もいるのかなー。」
キリコはワインを傾ける。

「自らの力で幻化できない魂はそうなるわね。自我を失い、自分が何者かわからないまま平然と暮らしているのよ。」

「自我ねぇ」
キリコがワインを全て飲み干した。

「自我に目覚めたらきっと狂ってしまうわ。そういうセカイなの。」
ノスタルジアが窓際に移動しキリコと同じ街を見下ろした。
「私はもう少しこの街を観察してくるわね。」
ノスタルジアはそう言うと窓から飛び立っていく。
「あたい寝るわー」
キリコはベッドに潜り込むと薄汚れた天井が見えていた。
「汚いわねー…」
ぼんやり考えていた。

「シュクレン…どこにいるのかなー。うまくやってるのかしら…会いたい!」
枕を抱き締める。そして何かを思い出そうとしていた。

「あたい…どうやって生きてきたんだろ…ずっと昔…シュクレンを愛してるように…誰かを愛してた気がする…誰なんだろう…。」
枕をギュッと強く抱き締める。
身体が火照り、汗ばんでくる。

「あたいのバカ…」
いつの間にか寝入っていて目が覚めると窓の外は明るくなっていた。

「オッハヨー!ノスタルジア!」
キリコは元気に挨拶する。

「おはよう、キリコ!随分昨夜は悶々としていたようね!欲求はきちんと解消したようね?」
ノスタルジアはホホホと笑う。

「う…あんた見てたの?」
「カラスは闇に溶け込むのが得意なのよ!余程シュクレンって娘が気になるようね!」
「ま、まぁね…」
「若いから仕方ないけど、職場恋愛はいろいろと面倒なのよ!あの時だって…」

「おっおっおっ、お説教キラーイ!」
キリコがトイレに駆け込む。

そしてマッドの所に行くとひたすらジャブを繰り出していた。

「どうやら真面目にやっていたようね!」
キリコがジャージ姿で現れ、その手には竹刀を持っていた。

「おはよう!あの…質問していいかな?」
マッドの顔が引きつっていた。

「何か?」
キリコが尋ねると竹刀を指差す。

「それ…何?」
「見ればわかるでしょ?竹刀よ!」
キリコは笑顔で答える。

「何に使う…の?」
「決まってるでしょお!こう使うのよっ!アチョープ!」
マッドの尻にフルスイングする。

「いぎゃおぉぉう!!!」
マッドの背筋がピンと伸びる。

「あたいの言うこと聞かなかったら
容赦なく叩くわよ!」
「キリコはスパルタだなぁ…」
マッドは涙目になり尻をさすっていた。
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