デスドアオリジナル

□奇跡の拳
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「まず、私がパンチを打つからそれを受けるフリをして倒れて!」
キリコがパンチを出す素振りをする。

「なんで?それがカウンターの何になるんだい?」

「いいから!」
キリコは竹刀を振り上げる。

「わ、わかったよ!」
マッドは両手を振るとファイティングポーズを取る。

「行くわよ!」
「うん!」
「トォッ!」
キリコの瞬速のストレートパンチがマッドの顎にヒットする。

「ぐげぇごぁ!」
マッドは膝から崩れた。

「あ…」
マッドはうつ伏せに倒れた。

「あんたねぇ!受けるフリって言ったのにまともに受けてどうすんのよっ!」
「そ、そんなこと言ったって…あんな速いパンチ…避けられない…よ。」
マッドの鼻から血が流れていた。

「……それもそうね。ではもう一発!」
キリコが振りかぶるとマッドは目を瞑る。
「……」
キリコはゆっくりパンチを出すとマッドは当たったフリをして倒れた。

そしてすぐに立ち上がろうとする。

「駄目!立ち上がったら駄目よ!」
キリコは竹刀を向ける。
「ど、どうしてだよっ!立たなかったら負けじゃないか!?」
「それでいいのよ!あんたは最初のパンチをもらってダウンして負け!それでいいの!」

「…どういう事だよ?インチキした上に負けろって言うのかよ」
「そういう事!」
キリコは竹刀を肩に担ぐ。

マッドは立ち上がる。

「僕じゃ勝てないから諦めろっていうのか!?」
キリコが目を細めてマッドに歩み寄る。
「昨日なんとかべアっての試合観たの…私の知ってるボクシングじゃなかったわ。階級もランキングもないただの殴り合いじゃない!?あんなデカい男と戦ったらあんたなんか一瞬でフルボッコにされちゃうわ!」
マッドの手は堅く握られ震えていた。

「僕は…確かに弱虫だ…でも、このチャンスを生かしたいんだ!でなきゃ僕なんか一生貧乏で、親孝行もできないじゃないか!」
キリコはため息をつくとマッドに詰め寄り肩に手をかける。

「いい?一生貧乏でも一生不幸とは限らないの!お金があるから親孝行できるわけじゃないの!病気のお母さんがいるんでしょ!?あんたが他人と殴り合って死んだらそれこそ親不孝だと思わない?弱いなら弱いなりに生きればいいのよ!」

「弱いなら…強いのに憧れて何が悪いんだよっ!僕は…強くなりたいんだ!もう…誰かに虐げられるのは嫌なんだ!」

「ふーん、んじゃ強くなって誰かを虐げるんだ?あんたも少し歪んでいるわね。」
「ち、違うよ!そんなんじゃない!」
「挑戦者は女といちゃついてるのか…悠長だな」
突然男の声がしてキリコが振り向くと大きな壁があった。
見上げるとゴリラのような男が見下ろしていた。

「な、何よ!驚かせるんじゃないわよ!」
キリコが吠える。

「バイソン…べア…」
マッドがその名を呼んだ。
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