デスドアオリジナル

□赤い雨
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シュクレンが鎌を構えると女は剃刀を片手に立ち尽くしていた。

「お前も同じ…」
女が呟く。

「何が…?」
シュクレンが訊く。

「いや…皆同じ…幸せの幻想の中に生きている。このセカイも同じ…」
女はケラケラと笑う。

「シュクレン!マズいぞ…奴は自我に目覚めている!自我に目覚めた魂は厄介だぞ!」
クロウが明らかに焦っているような口調だった。

「うん…」

シュクレンと剃刀女が対峙する。

シュクレンが踏み込み鎌を振るう。
鎌の先の空気が吠える。
剃刀女はそれを右手で受け止める。
しかし右手首から切断された。

「うぎゃあぁぁぁっ!!」
剃刀女が悲鳴をあげる。
左手で傷口を抑えるが出血が止まらない。

「…!?」
シュクレンは剃刀女を凝視する。
痛みで顔は歪んでいた。
明らかに決定的なダメージを与えたはずだった。
しかし魂魄にならずにいる。
追撃すべきか迷った。

「シュクレン!たたみかけろ!」
クロウの叫びに鎌を振る。
剃刀女の左肩に鎌を振り下ろす。
容易に左腕が切断された。

「あおぅぅぅがぁぁぁっ!!」
剃刀女は悲鳴をあげる。

「誰も…守ってくれない!!この痛みからも…この苦しみからもぉーっ!!」
剃刀女が絶叫する。

「あ…ぅ…」
シュクレンの動きが止まった。
無抵抗の者に追撃ができなかった。
その痛みが自らに跳ね返ってくるように苦しくなった。

「シュクレン!どうした!次々いけ!」
クロウが叫ぶ。

「はぁ…はぁっ!…駄目…できない…」
シュクレンの手が小刻みに震えていた。

「ああ…痛い!痛い!痛いいぃぃぃぃ!」
女は苦痛に顔を歪ませ涙を流している。

「シュクレン!感化されるんじゃねぇ!いいか!生きるか死ぬか食うか食われるかなんだよっ!徹底的にやれ!お前が過去に回収した魂の無念に応えろ!」
クロウが叫ぶがシュクレンは迷っていた。

「いけーっ!!」

「うぁ…」
クロウの叫びに反応して鎌を剃刀女に叩きつけた。
血飛沫が上がる。
鎌は胸に突き刺さった。

「いやがぁぁぁっ!!」
剃刀女は抵抗する事もなく激痛にのた打ち回っていた。

「うぅ…できない…もう…駄目…お願い…思い出して…」
シュクレンが剃刀女に近付く。

「シュクレン!?この馬鹿やろう!!」
クロウが叫んだ。
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