デスドアオリジナル2
□涙と笑み
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「泣く事…?」
シュクレンが訊くとキリコは笑顔で泣く素振りをして応える。
「あたいね、泣けないんだ。どんなに悲しい事でも。あたいは泣く事なんて無いと思ってたし必要ともしなかった。涙の出し方も忘れちゃった。でもシュクレンと出会ってあたいだって変われるんだって予感したのだ!」
キリコは立ち上がると食器を片し始めた。
シュクレンも食器を下げてキッチンに立ちキリコと並んだ。
「あたいね、生きていた時に誰かを強く愛してたの。その愛してた気持ちだけあたいの中に残ってるんだ。強く…強く…それは狂おしくなるくらいに。」
キリコの食器を洗う手が止まる。その横顔は少し憂いを含んでいた。小さくため息をつく。
「キリコ…。」
シュクレンはキリコの横顔を見つめる。
「生前はたぶんたくさん泣いたと思うんだ。涙が枯れるくらい。もしかするとあたいは泣きながらデスドアに堕ちて来たのかもしれない。ノスタルジアはそれを見てあたいから泣く感情を奪ったと思うんだ。あいつ意外と優しいのよ!あたいのことをいつも心配してくれるし…泣いてたら戦えないしね!」
そう言うとキリコは顔を背ける。そして小さく呟いた。
「あたい、なんで泣いてたんだろ…?」
しばらく沈黙が続き、時間が止まったような気がした。キリコの笑顔の裏に何があったのかシュクレンは知りたいとも思った。
「シュクレン!あたいの願いはね、現世に帰る事なんだよ!」
キリコは笑顔で振り向く。
「現世に…帰…る?」
シュクレンは現世という言葉に神妙な顔をする。
「そう!愛する誰かと一緒に生活するの!」
「愛する…誰か…?」
「シュクレンも、一緒に現世に帰ろう!現世でもあたいの親友になってよ!」
キリコは泡だらけの手でシュクレンの手を握る。
「親…友…?」
シュクレンはにわかに不安な気持ちになった。何かを忘れていて、ふと思い出せそうな不安な気持ちだ。
「うん!あたい達は深く繋がってるんだよ!現世に帰っても一緒に生きよう!ね!」
キリコは満面の笑みをシュクレンに向けた。