追跡

□第2章…次なる追跡
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タケシはネクタイを緩めオールバックの髪を無造作にかきむしるとため息をつく。

ドアをノックする音が聞こえる。

「私だ。」
野太い声がドアの向こうでする。
「どうぞ。」
ドアを開けて父が入ってくる。

「今日のプレゼンは完璧だったぞ。やはりお前に任せて正解だ。我が社の後継者として十分に周知されたに違いない!」
父親はタケシを賞賛する。
Gパンを穿きレザージャケットを羽織ると父が怪訝な表情を浮かべ近付いてくる。

「お前はまたあの下らん連中と付き合っているのか?」

「ええ、下の暮らしをよく知ることがヒット商品を生み出すには必要だと父さんが言ったでしょう?」
タケシは父を見つめる。

「あ、ああ、そうだったな!」

「ところでサンカクプラントの社長令嬢が殺人事件の犠牲になった事はご存知でしたか?」
タケシが父の目を見るとすぐに目を逸らした。

「知っている。残念だが仕方がない。」

「…仕方がない?」

「我が社の傘下から抜けたいと言ってきたのだ。あの狸爺め。リベートを払うのがバカバカしくなってきたのだろう。誰が急成長を手助けしてやったと思ってるんだ!」
父親は興奮し言い放った。

「…犯人に100億円の懸賞金をかけたそうです。そして生死を問わないと。」

「ふん、愛する孫にたった100億か。随分安いものだな。」

「庶民にしてみれば一生涯かけても稼げませんよ。」
タケシは部屋を出て駐車場に向かうとバイクに跨る。
こうして再び夜の街に駆り出した。

けたたましいサイレンが街に響いていた。
前から一台のバイクが走ってくる。
運転していたのは黒く長い髪を風に靡かせた少女だった。
タケシの目と少女の蒼い目が一瞬だけ合う。

「………。」

タケシは停車して後ろを振り向くが少女の姿はなかった。

すると携帯が突然鳴り響く。
液晶を見るとセイジからだった。

「どうした?」

「タケシさん!助けて下さい!ショウゴとサキがヤクザみたいな連中に絡まれてんだよ!!」
セイジの慌てた声で全てを察した。

「場所は?」

「サンカクプラントがある埠頭に連れて行かれた!」

「わかった。すぐに向かう。」
タケシは携帯を閉じると進路を変えた。
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