追跡

□第5章
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セイジは頭を抱えながら布団から起き上がった。

「つっ…昨夜は飲み過ぎたな…。」
酷い2日酔いだった。
服も着替えずに寝ていたせいか体のあちらこちらに痛みを感じた。

家には誰もいなかった。
両親は公務員だからこの時間にいるわけがない。
もう時計は昼過ぎだ。
洗面台に行って鏡を見ると驚愕する。
顔面が血まみれだった。
それはすでに乾いていた。

「おいおい…またかよ…」
頭を触るが傷は無い。
顔面をぶつけて鼻血でも出したか。
ポケットに違和感を覚え手を入れると何かが入っている。

それは100万の札束だった。
セイジは昨夜の事を必死に思い出す。
いつものスナックに行くとアケミと飲み交わす。
するとスーツを着た紳士が現れる。
彼は言った。

「やぁ、今日も来ていたね。」
彼はセイジをニート神と崇め生活を支援してくれる謎のお金持ちだった。
毎月のように会い酒を飲む。
記憶が無くなる程に飲むとポケットには決まって札束が入っていた。
それはセイジが10代から繰り返されてきた事だ。
だから彼は働いた事がない。

セイジは札束を再びポケットにしまうと顔を洗い玄関を出る。

すると道路にライトバンが止まっている。

「おう
!」
柄の悪い男が三人立っていた。
以前にタケシにやられた連中だ。

「ちょ…あ、あんたらとは手を切ったんだぜ!?この前みたいに殺すぞオラァ!」
セイジは声を荒げる。

「お前がか?」
男の一人がセイジの顔を掴み上げる。

「ふぐぅ!」
セイジはあまりの痛みに悶絶する。

「車をいつもの場所に運べ!決して中のブツを見るんじゃねぇぞ?この前みたいにしくじったら問答無用でお前を殺す!わかったな?」

男はセイジを車に押し込みポケットに封筒をねじ込んだ。

「謝礼の50万だ。お前はどこにいても逃げられない。俺達はお前を監視している。わかったな?」
そういうと男は車を出せと合図をする。

セイジは渋々車を運転し走りだした。

「くっそーっ!あいつら絶対殺してやる!!」
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