追跡
□第6章
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アキラは白い病室で目を覚ました。
「…」
周りを見るが何も無い。
ただ白い天井と壁があり、自分が寝ているベッドがあるだけだった。
「タケシ?」
そう、タケシをネクストに運びオダ先生に救助を求めた。
ここまでは覚えているが、その先はまるで覚えていない。
アキラは立ち上がりドアノブに手をかけるとあっさりドアが開いた。
廊下に出ると窓から見える外は明るい。
そして窓ガラスにうっすら映り込む自分の姿にアキラは驚愕する。
「…誰だ…こいつは…」
アキラは吐き気を覚えてトイレへ駆け込んだ。
一気に嘔吐する。
「…鏡?」
そのトイレには鏡があった。
タケシの話では産業スパイ予防のために鏡は無いと言っていたはずだ。
アキラは鏡を恐る恐る見る。
そこには見慣れた自分の姿ではなく、明らかに中年とも見てとれる男の姿があった。
「うぅ…なんだよ…なんだよこれは!?…どうなってんだ!?」
アキラは自分の顔を触り確認するとやけにゴアゴアした肌が指に引っかかった。
「俺はどうなったんだ!?」
アキラはトイレから飛び出す。
先ほどまで寝ていた部屋に戻るとタケシがいた。
「アキラ、どこに行っていた?」
「タケシ!?俺
は…俺は!!」
「見たのか?」
「俺はどうなったんだよ!?まるで別人だ!!なぁ、俺にサングラスしろって言ったのは他人に見られるからじゃなく、俺が俺を見ないようにだろ!?どうなってんだよ!!」
アキラは興奮してタケシの両肩を掴む。
するとタケシはアキラの両手を掴んだ。
「…タケシ…腕が…」
タケシの失われたはずの右手が何事もなかったかのようにあった。
「我が社の皮膚再生技術は世界一だ。」
「いや、いくら世界一でも無くなった手が一晩で元通りにくっ付いてこんな握力で掴めるのかよ!?元から切れてなかったみたいだ…おかしいぜ…タケシも…俺もなんか変だ!!」
「お前は何も知らなくていい。知る必要が無い。ただ知っておく事はお前も薬を投与しなければ死ぬという事だ。」
「どういう事だよ!?俺は…何にも病気なんかした事ない…それなのに何で…!?教えてくれよ!!なぁ!!」
アキラはタケシの肩を揺らすが何も答えなかった。
「僕から説明しようか。」
オダ先生が部屋に入ってくる。