デスドアオリジナル2

□涙と笑み
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深い微睡みの中から温かく柔らかいベッドでシュクレンは目を覚ました。
隣ではキリコが寝息をたてている。

「…キリコ…。」
キリコは枕を抱いて涎を流して寝ていた。徐ろに首を触ってみる。
指を這わせてみるが傷口らしきものはなかった。
しかし、冷たい剃刀の感触と斬られた瞬間の熱さと痛みの感覚が鮮明に蘇る。

「はぁ!はっ…はぁ!」
全身に虫が這い回るような嫌悪感と寒気が全身に迸ると呼吸が荒くなり体が震え始めた。
震える右手を抑えて震えを止めようとするが左手もまた震えていた。
「みんな死ぬの!」
低くくぐもった剃刀女の声が頭に響く。何度も何度も耳元で囁かれるように反響する。

「嫌…嫌…」
頭を抱え毛布を頭から被り猫のように丸くなる。
体の震えが止まらず恐怖と絶望感が体一杯に広がり、今まで積み重ねてきた自信のようなものが根元から崩れていくのがわかった。
今までも必死だった。
クロウという絶対的信頼を置ける主がいた。
しかし自分はクロウに反抗し、取り返しのつかない間違いを犯してしまったのだ。
その罪悪感もまた胸を締め付けた。頭を抱え目を固く瞑った。

すると突然後ろから抱き締められる。

「恐いの?」
キリコが耳元で囁く。
「うぅ…わからない…わからない…」
震えを止めようとするが止まらなかった。
「大丈夫、大丈夫よ。」
キリコは優しくシュクレンの頭を撫でる。しばらくそのままでいたが立ち上がると
「お腹空いたよね!今ご飯作るね!」
と言って寝室を出ていった。

柔らかい陽光が窓から差し、そよ風が白いカーテンを揺らしていた。

シュクレンは椅子に座りそれを呆然と眺めている。
キリコは鼻歌を歌いながら料理をしており、とても良い香りが部屋の中に広がってくる。

それはいつの日か見た光景だった。戦いに明け暮れる日々に突如として訪れた穏やかな1日。
キリコはあの日と変わらず笑顔だった。
「できたのだー!たんと召し上がれ♪」
キリコは次々料理を運んで配膳をしていった。
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