居場所
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草薙side
――――昼過ぎ
「何処に行きはるんや。尊」
バー HOMRAの二階から久し振りに顔を出したかと思ったらそこらに置きっぱなしにしていた酒を飲み漁り、尊は外へ行こうと扉を開けた。
普段、滅多に動かない尊が外に自分から出ていくという行為にバーに集まっていた吠舞羅のメンバーたちは唖然としていた
「ミコト」
アンナちゃんがトタトタと尊に駆け寄って尊の手を握る。
「ミコト、どこ行くの?」
「散歩だ。」
尊はアンナちゃんの問いに淡々と答える。
「雨なのに?」
外は土砂降りの雨が降っている。
様子からして尊は傘をさす事は考えていないようだ。
「風邪ひいちゃうよ」
アンナちゃんは無表情ながら目は心配そうに尊を見つめている。
「そうだよキング。今日はやめといたほうがいいんじゃない?」
十束はソファに座りながら首だけ尊の方を向いて言った。
「そうっすよ!尊さん!!
こんな中で散歩なんて何の得もないっすよ!!」
鎌本とさっきまで話していた矢田ちゃんは尊の身を案じて言った。
でも、尊はきっと散歩に出掛けるやろうな
「まぁ、ええやないか。
尊が外に自分から出とう言うとるんし。
こんなの一年に一回あるかないかの代物や。
好きにさしたりぃ。」
俺が尊に助け舟を出すと尊はそれに乗って大泣きの外へと足を踏み出した。
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周防 尊side
目が覚めると窓の外は土砂降りだった。
俺はこんな日に外に出るのもいいと思った。
晴れの日の違って雨もなかなかいいのかもしれない。
アンナは…ついて来ないだろうな。
――――これから一人で散歩でもするか。
外は思った以上に雨が降っていた。
バーから外へ出てから気づいたが傘を忘れた。
今更戻るのも癪だからそのまま歩いていると不意に目に留まるものがあった。
丁度、バーの裏の路地裏で壁に背を預け宙を見つめるフードを被った子供がいた。
立ち止まって自分を見つめる存在に気付いたのかそいつは俺の方を向いた。
うつろな目だった。
そしてポケットからナイフを取り出して
自分の胸に突き立てた。
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八田 美咲side
尊さんが土砂降りの中で外へ出た後に、
俺と鎌本は再び他愛のない話を始めた。
それからものの数分も建たなかった頃だった。
バーのドアが勢いよく開き、そこにはずぶ濡れになった尊さんが尊さん以上にずぶ濡れのフードを目深にかぶったガキを片手で抱えて立っていた。
「なんや どないしたんやそのコ!?」
草薙さんは血相を変えてカウンターから飛び出し、尊さんのそばに駆け寄った。
尊さんはガキを草薙さんに預けカウンターの席に腰を下ろしてポケットから煙草を探した。
十束さんは奥から毛布とタオルを持ってきてガキに渡そうとしたが、ガキはぐったりと草薙さんに身を預けて動かない。
十束さんは困ったような顔をして
「ソファに座らせよう」
と言い、草薙さんはそれに従った。
しかしピクリとも動かないガキをどう動かすか草薙さんは迷った挙句、ガキを横抱きにした。
ガキの足を持ち上げた瞬間、
今までコートに隠れていた白くて細い足が見えた。
……コイツ、まさか
足が見えるのとほぼ同時、
フードがガキの頭から脱げて、顔があらわになる。
カウンターの端にもたれていた猿比古が
「はぁ?」と声を上げた。
バーにいる全員が驚く。
草薙さんが抱きかかえているガキは
年端もいかない……女だった。