居場所

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草薙 出雲side

夜は更け、珠洲ちゃんは二階のアンナの部屋で仲良くアンナと寝た。

アンナへはそこまで気を張らずに接することができるらしい。



俺と周防、十束、はバーで
珠洲ちゃんについて話していた。

「アンナによると、
記憶が混乱しててよく見えなかったって…。
帰る場所とか、身内の事とか
ここにどうして来たのかもアンナにはよくわからないらしいんだ。」

十束は手を組み合わせ、それに顎を乗せて言った。

『珠洲はストレイン』

不意にアンナが言った言葉を思い出す。

「確かテレポートのストレインっちゅうてたなぁ…」


その時、バーの扉が開き伏見が気だるそうに学生用の革製の鞄を持って入ってきた。


「ガキの荷物、持ってきましたけど」

カウンターに鞄を置くと伏見は端の席に着いた。

「俺、帰りたかったんスけど」

「スマンな伏見。ありがたくこの鞄は珠洲ちゃんのもとへあとでこっそり返しておくわ。」

雨はもう降っていないもののこんな夜中に外に出たのはかなり寒かったやろうなと思いながら俺は伏見に問うた。

「朝に帰るか?」

「そうします。」

伏見は短く答えて二階に続く階段を見た。

「いいんスか。自殺未遂したガキを放っておいて。」

「大丈夫だよ。アンナがついてるからね。」











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櫛名 アンナside



ベッドが揺れた。

横になっているだけでまだ眠れてなかった私は目を開いて揺れの原因を探した。

「…珠洲?」

寝やすいようにブレザーを脱いでネクタイを外しワイシャツとスカートだけになった珠洲が上半身だけを起こして窓の外を見ていた。

何かを思いつめた表情だった。


私の視線に気づくと一瞬、目を見開いて驚いたあと「君も、眠れないの…かな」と私に問いかけた。

私はベッドに正座して珠洲を見上げて頷く。
珠洲が不意にぎゅっと拳を握った。
珠洲は最初にバーに来た時よりかは落ち着いていたがまだ怯えていた。

「不安?」

珠洲は困った顔をした。

「君は、私のすべてを見たんだよね」

少し、焦った表情だった。

「ううん。珠洲の心の中…
ごたごたしててあんまり見れなかった。

そこまで見るつもりはなかったけど……。」

私は珠洲のプライバシーを侵害してしまったことに申し訳ない気分になった。


でも、珠洲はそんなことを気にしている様子じゃなかった。


「…じゃあ、名前と能力の事以外……


―――何も知らない?」

「そうだよ。」と答えると珠洲は考え込むように目を泳がせた。


「どうしたの?」

珠洲は私をみて、済まなそうな顔を、
ほんの一瞬見せた。

「私の事、気遣ってくれてありがとう。アンナちゃん。」

初めて珠洲に名前を呼ばれた。


嬉しかった。



でも、その時 私は知らなかった。

珠洲が何を考えていたのかを―――








   

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