居場所

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周防 尊side

バーに入るなり、クラッカーの音が鳴り響いた。

「あれ?尊さん?」

少し、外に出ていたらその間にバーの中は豹変していた。

クラッカーを鳴らした奴らを見ると、驚きでいっぱい、という顔をしていた。

「なんだ、これは。」

「あ、尊さん知らなかったんスよね!?」

八田が手に持ったクラッカーを下ろして言った。


「なんの騒ぎだ。」

「今日、珠洲の歓迎会をするんっスよ」


八田の言葉に俺は合点がついた。


ここに住まうことになるんだし、当たり前か。




「八田さーん!!!クラッカーなに尊さんに使ってんですか!?」

「わりぃ!!間違えた!!!!」


八田は準備の方へ再びかかりに行った。


「おい!!連絡があって、もうすぐ帰って来るってよ!!」

一人が店中に響き渡る声でそういうとみなバーの入り口に集まって草薙達の帰りを待った。



十束 多々良side


草薙さんがもうすぐ店に着くところで端末で連絡を入れた。


「どうかしたんですか?」

「ふふ、お楽しみ、だよ。」


俺たちが何かたくらんでることに察したのか珠洲は不思議そうに小首をかしげる。

「着いたで。」

いつの間にか俺たちはバーの前にいて草薙さんがノブに手をかけていた。

「珠洲、こっちこっち。」


珠洲をドアの一番前に立たせる。


そして草薙さんが勢いよくドアを明ける。






「Welcome to Homura!!!!」




クラッカー音が鳴る響く。
珠洲はびっくりして目を大きく見開いていた。


「さ、楽しもう。」

俺が肩を掴んで後ろから顔をのぞかせてそういえば、まだ状況を呑み込めてない珠洲は
おろおろとしている。


「分かっとらんのか?
…珠洲、お前の歓迎会やで。」

「えっ。」


草薙さんの言葉に驚く珠洲。


「もう、俺らは仲間なんだよ。」

「なか…ま。」

珠洲は呆然と呟く、そして目を潤ませた。


「ほら、泣かない泣かない。」

泣き顔をみんなに見せないように抱き寄せて、俺は珠洲に注目するみんなに言った。


「みんな、聞いてくれ。
ここに居る珠洲は今日、
アンナを殺そうとしたヤツからアンナを守った。

珠洲をチーム吠舞羅に入れるのに異論がある者はいるか?」

「いるもんか!!」

「アンナを守った英雄だ!!」


みんなは口ぐちに珠洲を受け入れたことを言い表す。
珠洲は目の前の光景に口元を押さえて泣くのを堪える。



そして、後ろの方にいたキングがゆっくりと珠洲に歩み寄る。

静かになったバーの中でキングがゆっくりと珠洲に手を伸ばす。



「この手を、取れるか?」



キングがそう言うと、珠洲は遠慮がちに尋ねた。

「…取っても、いいんですか?」


手をギュッと胸の前で手を握り締め、俯く珠洲


「珠洲」

俺がそっと珠洲を抱き寄せる。



「俺、個人の意見だけど、
珠洲には、ここに居てほしい。

俺と一緒にいてくれるために、
キングの手を。受け取ってくれるかな」

途端、珠洲は赤くなって、ぎこちない仕草でキングに向き直った。

キングはため息交じりにもう一度

「この手を、取れるか?」


と、聞いた。



珠洲は頷いて恐る恐る手をキングに向かって伸ばし、

キングと手を繋いだ。



珠洲の手首にシルシが浮かび上がる。


「おめでとう。」


草薙さんがそういうと、周りからも沢山の
「おめでとう」という声が上がった。

珠洲ははにかんで「ありがとうございます。」と言った。



「珠洲」


アンナがチョイチョイと珠洲の袖を引っ張る。

「どうしたの?」


珠洲が応えると、アンナは草薙さんに預けた紙袋の、アンナが選んだ方のを指差して言った。

「着替えないの?」

珠洲が「えっ」と小さく声を上げて驚く。

「そうだよ。今日こそアンナの選んだあの服を着るべき日だよ。」


「そうや、二階の部屋で来てきぃ。」

珠洲は顔を真っ赤にして、「でも…」とか「恥ずかしい…です。」と言っていたけれど
アンナに二階に連れて行かれ、間もなくして二階から降りてきた。


「…わぁ」

アンナと同じ、赤を基調としたゴスロリは、
サイズも珠洲にぴったりで
よく似合っていた。


アンナは珠洲を階段付近から引っ張るが珠洲は一向に恥ずかしがって出てこようとしない。

一肌脱ぎますか。

俺は珠洲に寄って膝の裏と肩に手を回し、珠洲を横抱きにした。

「きゃっ」

珠洲はいきなり持ち上げられて小さく悲鳴を上げて俺の首に腕を絡める。

「ほら!!みんな、お姫様の舞い降りたよ!!」


俺がふざけてそう言えばみんな笑顔で珠洲をお姫様と言って讃美する。

本当にお姫様みたいだよ。珠洲。

「ふふっ」

珠洲が顔をほころばせた。

「…やっと笑ってくれたね。」

俺がそういうと、珠洲は優しい顔で




「多々良さんのおかげです。


ありがとうございます。…多々良さん。」

そういってくれた。

その顔に思わずドキッとしてまう俺。


「なんやー?モテとるな、十束ー?」

草薙さんにはやさる俺たち。
珠洲は恥ずかしがっていたけど、
俺としては嬉しかった。


これからも、仲良くしていこうね。


―――珠洲。











   

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