短期戦

□不運+不幸=?
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※bsr×rkrnのクロスオーバー


「何でこんな所に落とし穴があるんじゃァァァ‼︎‼︎‼︎」


忍術学園に似つかわしくない野太い叫び声が響き渡った。


何故じゃ…何故小生ばかりこんな目に会う!しかもこの忍術学園に来る度に落ちるし、挙句回を重ねるごとに穴が深くなってるじゃないか‼︎






時は遡ること一刻前。豊臣軍知将・黒田官兵衛は忍術学園の門を叩いた。九州へ戻る道すがら、忍術学園の学園長に秀吉からの文を届けるよう大谷から半ば脅されたのだった。

官兵衛は渋々受諾し、海路で帰るのを諦め重たい鉄球を引きずってやって来たのだ。来るのは初めてではなく、今までも何度かこうして文やら土産やらを届けている。そのため学園長とは仲が良く、今日もお茶と将棋を楽しんだのだった。

役目を終えそろそろお暇しようと小松田を探している途中、それまで何ともなかった地面に穴があき、重力に逆らわず落ちてしまったのだ。そして現在……






なんとか狭い穴の中でデカイ図体を起こす。落ちた際に先に落下したお馴染みの鉄球に強か腰を打ち付けたもんだから若干動きが鈍る。見上げれば空は丸く縁取られ、憎らしいほど青かった。

「さて、これからどうするかねぇ?」



穴の深さは小生の背より二寸(約66cm)ほど深く、手を伸ばせばギリギリ淵には届く。しかし鉄球をどうしたものか。今までは深くても小生の胸元あたりまでだった。肘をつく事が出来たので自力で這い上がれたし、時には誰かが助けてくれた。

「おーい」と言っても返事は返ってこず、耳をすませてみても辺りから誰の声もしない。


「まいったなぁ、こりゃ小生だけでは出れん。保健委員会の奴らの気持ちがよくわかる……」


小生は立ってるのも疲れたので鉄球に腰を下ろした。上を見上げて思い出すのは小生と同じくらい"不運"に塗れた生徒達だった。

保健委員会、今ごろ何してんだろうなぁ…誰かも落ちてたりするんだろうか?そしてそれを探しに来た奴らが偶然にも小生を見つけちゃくれないだろうか……いや、ないな。小生も奴らも不運だ不幸だ言われてんだ、そんなラッキーあるわけない。


また一つ大きくため息を吐いた時、頭上に暗く影がさした。


「あれっ?乱太郎じゃなくて官兵衛さんがいる」

「ん?うおぉっ‼︎伊作じゃないか‼︎」


声を掛けられ上を見ると其処には、先程まで考えていた保健委員会の委員長・伊作が覗き込んでいた。小生にしては珍しい幸運に胸が踊った。


「官兵衛さんこんにちは!いらしてたんですね。そしてまた穴に…」

「呑気に挨拶などいらん!それよりも助けてくれ‼︎」


小生の言葉にそうでしたね、と何やら肩に掛けていたものをその場に置き、此方に手を伸ばしてきた。

小生はそんなんで大丈夫か?と思いつつ手を掴んだ。

「せーので引っ張り挙げますから、官兵衛さんも壁を蹴って上がって下さい」

「おうさ」

「それじゃ、せーの!って、うわぁぁぁ‼︎⁇」

「んな‼︎⁇」

上がろうとした途端、何故か上から伊作の叫び声がした。次の瞬間、小生の手に引かれ何故か伊作が落ちてきやがった‼︎


「痛っててて……」

「……伊作、退いちゃくれんかねぇ。腹も背も痛くてたまらん」

「え?うわっ!ごめんなさい‼︎‼︎」


伊作は慌てて小生の上から退いた。ただでさえ狭い穴に男が二人、どうせなら可愛い娘が落ちてくりゃよかったのに…
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