Happiness Family

□残念、開幕のようだ
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「…真、オレ先にいってるから」


朝から冷たい声が耳を通ってオレの脳内に響いた。
返事をする前に部屋の戸を閉めて声をかけてきた俊はさっさと出ていく、ご丁寧にでかい音までたてて。
勘弁してくれ、オレは低血圧なんだよ。


「…、あぁ…朝飯の担当…」


重い体をベッドから起こして朝のひんやりとした空気に身を震わせる。
温かいベッドに再度潜りこみたくなる衝動を押さえて目をこすり、ふらふらと立ち上がった。


「あー…めんど…」


開けられたカーテンから差し込む朝日に目を細めて小さく呟いた。





大方の支度を終えて(寝癖は直さない)階段を降りればキッチンからはいい匂いがする。
今日の料理当番は、オレと…認めたくはないが双子の俊だ。
オレは朝に弱いので作ることはないが俊は一人で料理くらいできるので手伝う気もない。


「俊、はよ」

「…おはよ」


部屋への戸を開け、俊に声をかければ小さくしかも睨みつけられながらあいさつが返ってきた。
オレ、真と俊は仲が悪い。
誤解を招くようだが、俊がオレに冷たいだけである。いやべつにいいけど。
テーブルにある新聞を乱暴に掴み読み始めたオレにそろそろうるさいのがくっついてくるだろう。


「あ、まこ〜おはよ〜」

「おはよう真、もう起きてるなんて珍しいな雪降るぞ」

「…おはよう、隆平兄さん健介兄さん」


ほらきた、部屋に入ってくるなり抱きついてきたのが一つ離れた隆平兄さん、その後ろでオレことを馬鹿にしたのが健介兄さん。
高校三年生なのに特に隆平兄さんは人にやたら抱きつく、オレ的には結構困る。
けれど、どうせすぐに離れていくから気にしない。


「しゅんくん、おはよ〜」

「隆平さん、おはよ。はい、手伝ってね」

「しゅんくんのためなら何でも〜」


いや使われてるだけだよ隆平兄さん。
ちなみにオレの向かい側に座った健介兄さんはテレビつけてニュースを見始めた。


「健介ぇ、和くん起こさなくていいかなー?」

「おっ自民党が…、え?カズ?幸兄がなんとかすんだろ」


健介兄さんは意外と渋い。


「ん、ぁ〜おはよーさん」


ボッサボッサの頭をかきながら入ってきたのはこれでも長男、翔一兄さん。
それに隆平兄さん達があいさつを返す。


「翔兄おはよ〜」

「おはようございます翔一さん、寝癖直した方がいいですよ」

「おはよう翔兄。俊、無駄無駄、翔兄が直すわけないだろ」

「なんや健介…酷いなぁ」


いや、酷いのはアンタの髪だよ。オレの寝癖も酷いけどアンタのは小鳥住めるぞ。
と思ったけどいわないでおこう、この人はオレの天敵だからな。


「真、なんや今、結構失礼なこと考えたやろ」

「アンタはエスパーかっての…」


そうこうしてるうちにオレの新聞は翔一さんに取られる。


「新聞貸しやぁ」

「もう取ってんだろーがよ」


無視された。この兄にはなんとも逆らえない、ため息が勝手に口をついて出る。


「おっおはようございます」


少し上擦った声に何かと思って振り返れば末っ子の光樹がビクビクしながら部屋に入ってきた。
もう見慣れた光景なので誰も心配せず、皆普通に挨拶を返す。


「光樹おはよう、こっち手伝ってくれる?」

「あ、はいっ」


いきなりの声をかければ少し肩を揺らした光樹も、それが俊だとわかれば少し笑みを浮かべて駆けていった。
兄達が怖いらしい光樹も俊は大丈夫らしい。
まあ優しいからな、オレ以外に。


「ねー、料理当番は俊とまこでしょ〜?」

「アカンて隆平、コイツ朝弱いからそんなんする気力あらへんよ」

「ていうか真に料理させたら全部辛いか苦いかになんだろーが」

「…あー…、勝手に言ってろ」


上から隆平兄さん翔一さん健介兄さん、失礼にも程がある。



「カズ、起きろって」

「幸兄ちゃ……、…んー…」

「ね、ねるな!」


騒がしい、そう思って振り返ればそこにいたのは次男の幸男兄さんと弟の和成。
和成は幸男兄さんにほぼ背負われて、しかもパジャマだ。
つーかお前何歳、光樹見習えよ馬鹿。
オレは小さくため息をついた。






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