サイボーグ009

□微笑まないで
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微笑まないで


ハインリヒさん。
素敵な名前。
私がお昼の2時くらいにバラに水をあげていると
通る彼はドイツ人らしい。
でも流暢な日本がかっこいい。

まだ名前くらいしか知らないけれど
かなりの頻度で本屋に訪れている彼は
私の店の前を通る度にあいさつ程度の会話はする。

今日も…あれ?

「買い物になぜ俺が…」

ハインリヒさんとあらわれたのは知らない金髪の女性。

きっとその女性も外国人。
すごく、お似合いで…
私は慌てて店の中に引っ込み、
影に隠れた。

「なんで隠れたんだろう…」

小さくなって耳をすませば会話が聞こえた。

「あら…?ここがそう?」

きっと金髪の女性が話しているんだろう。
彼女も流暢な日本語を話す。
ここが、そうとは…
ハインリヒさんは何を話したのだろう…

「今日はお休みなのかしら」

顔が見たかったわ〜なんていう声とともにハインリヒさんの声は聞こえない。

次第に小さくなっていく声に私は落ち着き店の外を見た。

いつも、眉間にしわを寄せている彼からは想像できない柔らかい表情が見えた。






「彼女さん…かな」


買い物って言っていたし。

なんだろう、すごく胸が苦しい。

そういえば最近働き詰めだったし、
いっぱいハンドメイド作品を作っていたので
体調が悪くなったのかもしれない。
しかし最近すごくはかどるのだ。


今日は少し休もうと、店をたたんだ後も
私の胸の痛みが消えることはなかった。





お題:微笑まないで
2012.11.06

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