Dream

□とんだ記憶。
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「・・・なまえ。」

なまえはぴくりと反応して
俺のほうをみる。
忘れられてるとか、関係ない。
俺はとにかく、なまえに話しかけなきゃいけないと思ッた。
ここでなにもしなければ
俺の中でなまえが完全に
失われてしまう気がした。

なまえは俺の顔を見たあと、
キョロキョロして
また俺の顔を見る。
「私?」とでも言いたそうに、
少し上目遣い気味で俺をみる。

「えーと、あの・・・」

だいぶ戸惑ッてる。
そりゃあそうだろうなと思いながら
俺はふッと鼻で笑う。

「いーよ、忘れてることしッてるし。
 どーせ思いだせないだろうし。」

「あ、あ、すみません・・・」

記憶がなくなッたッていッても
当たり前だが顔も声もしぐさも
全て同じだから
なまえがここにいる、と
どういうわけかほッとした気分になる。

なまえは何か話したほうがいいんじゃないか
とでも思ッたのか、
ベンチに座りなおして俺の顔をちらりと見る。

「・・・西。」

「ん?」

「西丈一郎。俺の名前。」

とりあえず名前だけ教えておく。
まぁ、教えたところで
どうにもならないだろう。

「あッ!」

何か思い出したように言う。
もしかして、
俺のことを
ガンツのことを
思い出したのだろうか。

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