女装しなきゃいけない赤司様!

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彼女は息子が欲しかった。
何故征十郎を選んだのか。
それはすぐに分かった。

「初めまして。征十郎くん!」
輝くほど眩しい笑顔を見せる彼女の名前は征華といった。
綺麗な赤い髪。
それは征十郎と同じもので。
誰もが目を奪われるくらいの美貌。
それは征十郎と同じもので。
しかし少しだけ違うところもあった。
それは瞳。
彼女の瞳は橙色のものであった。
君たちは兄妹かい?初めて会ったものならばそう尋ねるであろう。
それくらいに似ていた。

「...初めまして。」
彼女とは正反対に暗く、低く、そうとだけ呟いた。
「私は征華。今日から兄弟だよ!よろしくね!!」
「征十郎です。これからよろしくお願いします。」
「え、名前そっくりだね!後、敬語なんていらないよ!あ、ねぇねぇ誕生日っていつ?」
乗り気ではないのかいつも以上にどんよりとした雰囲気を醸し出している。
「そうだな。12月20日。」
「あ、じゃあ私が妹だね。私は1月25日生まれなの!」
「同い年なのかい?」
「そうだよ。知らなかったの?」
彼は赤司になるということ以外は何も聞かされずにここに連れてこられた。実は兄弟になるということもこの時知ったのだ。
「あぁ。」
「そっかぁ。んーとこれからはお兄ちゃんって呼ぶ!」
「.....え。」
「決定なのです!!」
彼女はとても笑顔が似合う人だった。

それから世話しなく日々は過ぎていった。
5年たった。彼らは10歳になった。
その日々たちは征十郎にとって今までとは違う日々であった。
「お兄ちゃん!」
「なんだ?征華。」
彼らは始めとは違う、本当の兄妹となった。
固かった表情は溶け始め、少し、本当に少しだが笑うようになった。
「あのね、ここ教えて欲しいの。」
征十郎も学校に通うことができるようになっていた。
征華と同じ学校。同じ学年。同じクラスであった。
「あぁ、ここか。三角形の合同条件を覚えているか?」
彼は頭が良かった。
他のものたちとの差はすぐに埋まり、追い付くどころか追い越していた。
こうして征華に勉強を教えることも多々あった。
「征十郎、征華。」
彼らの母親の声だ。
「「お母様!」」
2人は彼女に駆け寄っていった。
征華は抱きつき、征十郎は側でその様子を眺めていた。
「久し振りね。2人とも。」
「本当よ!会いたかった!!」
「僕もです。」
その様子は家族そのもので。
「あらあら、ごめんなさいね。次はすぐに帰ってこられるようにするわ。」
「絶対よ!」
「今から楽しみですね。」
彼らは彼女が大好きで。彼女は彼らが大好きで。
「いつも、ごめんなさいね。」
「今回はいつまでいられるの?」
「ご多忙なのでしょう。お気になさらずに。」
それが日常となっていて。
「ありがとう。そうね今回は1週間くらいよ。」
「短いわ!」
「こら、言葉遣い!」
そんな日々がいつまでも続くと信じていた。
「怒られちゃったわね。」
「うーごめんなさい。お兄ちゃん。」
「分かればいい。」
そのときまでは。
「じゃあ少しお父様に連絡してきますね。」
「はーい。」
「いってらっしゃい。」
もうすぐさよなら。その幸せは音をたてて崩れていく。
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