女装しなきゃいけない赤司様!

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その日の夜。電話にて。

「今日で休みが終わりなんだ。帰らなければならない。」
内心寂しいと思っているが、性格が邪魔して素直になることができない。
「そっか...寂しいな.........」
降旗があまりにも直球に告げてくるため動揺してしまう。
「わた....」
「実家が東京じゃないの?」
“私も”と征十郎の口が紡ごうとしたが、それは叶わなかった。征華ではない。征十郎なのだ。
「...いや実家は東京だが、学校が京都でな。寮で生活している。」
「京都?もしかしてお兄さんと一緒の学校?」
そういえば月バスにそう赤司は京都の洛山高校だと書かれていたようなと思いだし何気なく聞いてみたのだ。
その問いに征十郎はしまったと顔を歪めた。
ここまできて、違うというのもおかしな話になってしまうだろう。
「......そうだ。兄と同じだ。」
肯定する以外の道は残されてはいなかった。
「へぇー。仲は良いの?」
「あぁ。良い方だと思う。」
降旗はただの好奇心で聞いているだけなのだろうが、征十郎としてはかなり困っている。
いつボロが出るか分かったものではない。一刻も早く電話を切りたかった。
それとは逆にいつまでも話していたいという気持ちもあったのだが。
しかし、征十郎にはどうしても言いたい言葉があった。
「すまない。そろそろ時間が.....」
「あっ!ごめんね!!」
「あの....」
「またこっちに来たら一緒に出掛けましょうね。」
どうしても言いたい言葉。それはまた会いたい、遊びに行きたいという気持ちだった。
これで終わりにはしたくなかったのだ。
ただの社交辞令かもしれない。それでも降旗がそう言ってくれたのだ。
少しでも思ってくれていたのかもしれないと思うととてつもなく嬉しかったのだ。
「征華さん....?」
征十郎が黙ってしまったことにより、何かまずいことを言ってしまっただろうかと不安そうに名前を呼ぶ声さえも愛しくてたまらなかった。
「そうだな。また行こう。」
「はいっ!」
声で分かる。電話の向こうの降旗が笑顔であることが。


そうして電話は切れた。




『また........か。』
征十郎はとても綺麗に微笑んでいた。
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