Short★book
□届かないと知っていた
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「敦、起きろ。朝だよ。」
「んーも...やだ.....」
氷室家の朝はこうして幕を開ける。
陽射しが窓から差し込む。その眩しさに敦は目を細めると布団をブラインドにしようと顔を覆うように被る。
辰也がやれやれといった風に布団を剥ぎ取れば観念したかのようにベッドから降りようとする敦。
これが毎日、飽きることなく同じように行われる。
冬は陽射しではなく寒さのせいでくるまるため、同じといってもいいだろう。
「はい。」
「ん、あんがと。」
手を差し出し、立ちやすいようにと引っ張り、そのまま階段を降りて、リビングへと向かう。
敦と辰也は兄弟である。兄・辰也は今年で高校2年生。弟・敦は高校1年生となった。どちらも陽泉高校に通っている。
両親は現在出張中で、家には2人だけとなっている。
「「いってきます。」」
いってらっしゃいの声はないけれど、2人は一緒に家へとそう言い残し、学校へと歩き出した。