女装しなきゃいけない赤司様!
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公園でブランコを漕ぐ。
ギーコギーコと錆びた鉄が擦れ合う音だけが響いた。
広い公園には降旗1人がいるだけ。人の少なすぎる公園はやけに広く感じられた。
降旗にはちゃんと友達と呼べる存在がいる。けれど降旗はどうしても自分で一線を引いてしまうのだ。誰かを信じるということが出来なかった。優しかった先生ももう。どんどんと消えていく先生の顔、言葉。
降旗は唐突に泣きたくなった。自分がひどく惨めに感じられたのだ。自分が今生きている意味。存在している役割。何も無いような気がして。他人にも同じことを思われているのではないか。一度考え出せばその悪循環に嵌まってしまい、抜け出せない。降旗は今その中にいた。
『全部、忘れられたらいいのに....』
頬に一筋の涙が伝った瞬間、ブランコを漕ぐのを止め、俯く降旗の目の前から声が聞こえた。
「どうかしたのかい?」
バッと顔を上げ、目の前を凝視するとそこには綺麗な赤い髪を持った同じくらいの年の男の子がいた。
とても綺麗な赤。
降旗は彼から目が離せなかった。
神様が悪戯に決めてしまった運命の始まり。