甘い夜【完】

□02
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「ん・・・。」
目を覚ますとそこは自室の天井だった。
ガバッ
『あれ・・・僕どうやって帰ってきましたっけ?青峰くんたちとストバスをしていて・・それで・・・・』
そこから先が思い出せない。
1階へ下りると母がテレビを見ていた。
「あら、起きたの?大丈夫?」
僕がなんのことかと思っているのに気づいたのか
「もしかして覚えてないのかしら?あなたストバスの帰りに倒れたとかで黄瀬くんていう人が運んできてくれたのよ。」
「黄・・瀬くん・・・?」
『あれ、僕何かを忘れている。何か・・・何かあった。帰りに・・・・』
ズキッと頭が痛み出し、その場に倒れこんだ。
「テツヤ!大丈夫!?」
母の心配そうな顔が目に入る。
『あれ?この言葉僕も今日言いませんでしたっけ?』

「--くん!!大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」

『誰に言ったんでしたっけ?』
しばし考えていると
「テツヤ?大丈夫なの?」
母がなおも心配してくれている。
「・・大丈夫です。少し寝すぎただけです。」
そう答えれば
「そう・・。なら良かった。」
安心したように胸を撫で下ろす母。
「今日はゆっくりしていなさい。明日は休んでもいいから。」
そう早口に言えば、僕を起こし、2階へと連れていってくれた。
「ありがとうございます。」
と言えばニッコリ笑って頷いてくれた。
その日はそのまま眠りについた。


翌日、黒子の体調は至って良好だった。
黒子の母親は始めは心配していたが、普段と変わらない様子の息子に安心して登校を許した。
『あれ・・?』
校門の前で違和感を感じた。
『いつも必ず会うのに・・・』
そう毎日出会う黄瀬に今日は出会わなかったのだ。
『まぁ部活で会えますよね。』
そう思い1人で玄関へと向かった。

1日の授業も終了し、部活へ向かう黒子。
「練習を始めるぞ!」
赤司の声が体育館に響く。
練習も中盤に差し掛かってきた頃、黒子はあきらかに違和感を覚えていた。
『おかしい・・・。いつもは煩いくらい話かけてくるのに、今日はまだ1回も・・黄瀬くん?』

練習が終わり珍しく居残り練習もせずに帰ろうとする黄瀬くんに声をかける。
「黄瀬くん!」
ピタッと動きが止まる。
「なんすか、黒子っち?」
「っ!」
いつもより冷たい声に少し怖気づく。
「今日様子変ですよ。僕、何かしましたか?」
「!違う!!!」
大声で怒鳴る黄瀬。
普通に会話を楽しんでいた者は口を閉じ、自主練をしていたものはその手を止めた。
それに気づき気まずそうな顔をする黄瀬を見て
「場所を変えましょう。」
と黄瀬の手を引き校舎裏へと向かった。

校舎裏へつき、着くまでというか着いてからも黄瀬は1度も顔をあげない。
「黄・・・」
瀬くんと続けようとすると
「黒子っち。」
と遮られてしまう黒子。
「・・・なんですか。」
「今日はごめんなさい。」
と頭を下げて謝罪してくる黄瀬。そしてポカンとしている黒子。黄瀬はやっと顔をあげて
「今日、黒子っちを避けてた・・・理由は今は言えない。けど絶対に言うから今は待っててくんないスか?」
と言い放った。
その真剣な顔に何か重要なことなのだろうと察し、
「・・・・分かりました。待ってます。」
「ありがとう!」


そうしてその日は別れた。
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