Short★book

□キャットリアル
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ピピピピピピ
朝を告げる目覚ましが部屋に鳴り響く。
『あー。さて、準備しますか!』
と高尾がいつも通り起き上がる。
そして違和感に気付いた。
『あ...れ?なんか低くね。』
そういつも見る景色より、何故か少し.....いやかなり目線が低い。
急いで全身を見回す。
異変に気づき、呆然とする高尾。
『.....俺、猫だ!!』
高尾はなんとありえないことに、信じられないことに、猫になってしまっていた。
え...と声を出そうとすれば
「ニャ...」
となんとも可愛い声が漏れる。
幸いなことに今両親たちは出張中のためいない。
本人たちは息子の誕生日があるんです!!とかなり我が儘を言ったようだったが、それは通らなかったらしい。
高尾はただそのことに感謝した。
『マジ良かった...父さんと母さんがいたら、卒倒っていうか警察に直行だよな.....』
それくらいの親バカなんですね。

さて、それよりもだ。
『やっべ...真ちゃんどうしよ.....』
もうすぐで待ち合わせの時間である。
時間厳守である緑間の性格からして既に待っている可能性が高い。
『でも、こんなんじゃ字も書けねぇし、メールも打てねぇし。あ、学校になんて言おう.....つか何とも言えねぇ。俺サボリじゃん。それはどうでもいいけど、真ちゃんがぁぁぁ!!』
と頭をかきながら、悩んでいた。猫が。
『ていうか俺今日誕生日なんですけど!?何なのマジで!絶対真ちゃん誕生日プレゼントとか用意してくれてるよ。絶対今頃ドキドキとかしながら待ってくれてるよ。うぉぉぁぁぁぁ、マジ可愛い!!!!!』
今度は悶えていた。猫が。
まぁそんなこんなの苦悩?を乗り越えた結論は
『悩んでたってしょうがねえ!とりあえず行こう!』
になったわけだ。
「ニャニャーーー!」
本人的には行くぞ!と言っている。

『遅い...』
そんな中、緑間は1人高尾を待っていた。
11月とはいっても外はとても寒い。ハァッと息を吐き、手を擦りあわせる。
その一連の動作を見ている猫が一匹。
『真ちゃんマジ可愛い!!さすが俺の嫁!!!』
どうやら高尾が到着したようだ。
「猫.....か。」
自分を見つめてくる猫に気付き、近づいていく。
そして抱き上げた。
「お前も寒いだろう。」
と言い、抱き締める。
『俺.....猫になって良かったー!!』
普段中々デレてはくれない恋人の貴重なデレを見ることができて、高尾は今感動にみちあふれていた。
「それにしても遅いのだよ。」
そう不満そうに呟く緑間の声を聞いてようやく自分がここへ来た目的を思い出したようだった。
「ニャーニャニャーーニャー!」
俺、俺、俺が高尾だよ!
とかなんとか伝えたいようだが、残念ながらというか当然伝わる訳がなかった。
「急にどうしたのだ?.....これ以上は遅刻するのだよ。全く来れないならメールくらい寄越せ。」
心なしか悲しそうな顔をする緑間を放っておける訳がない。
「お別れなのだよ。」
と猫もとい高尾を地面へとおろす。
そして学校へと向かい始めた。
トコトコトコ
ペタペタペタ
トコトコトコ
ペタペタペタ
「ついてくるな!」
「ニャー...」
高尾は行きたいという思いを瞳に込めてただ懇願するように見つめた。
「ウッ.....」
それにひどく動揺を見せた緑間はしばらく考えこんだ。
「静かにしているなら構わない。鞄にでも入っていろ。」
それにパアァッと顔を輝かせる高尾。
「ニャー!」
ヤッター!と叫ぶ。
「だから、静かにしているのだよ!」
緑間が怒ると
「ニャー.....」
か細い声ではーい.....と返事を返した。
そして2人は一緒に学校へと向かうことになった。
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