Short★book

□届かないと知っていた
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俺には弟がいる。名前は敦。
俺よりも身長がかなり大きいが、中身は子供っぽくてとても可愛い。
お菓子が大好きなところも、眠たそうに大きな口を開けてあくびするところも、俺に向かって微笑んでくれるところも全部全部愛しくて仕方がない。

俺は敦が好きだ。

兄としてではない。男として好きなのだ。
だけれど知っているのだ。
あいつが俺の方を向くことなどないと。

俺がお菓子をあげて大好きと抱き締められていてもそれは兄弟の延長線であって、兄弟という枠から出ることなどないのだ。
分かってはいるんだ。分かっては。
けれど、想いはやはり止められはしなかった。もはや止める気すらおきなくなってしまった。
諦めたのだ。敦を好きでなくなることを。


手を伸ばせばそこにいる。
なに?と気だるげに返してくれる。
兄として見られていないこともあると感じる時もある。けれど、なんだかんだいって尊敬してくれているのも知っている。




俺は想いは伝えるものではなく叶えるものだと思っていた。
もちろん伝えなければ始まらないが、断られても諦めるなんてことはしないと思っていた。
必死に食らいついて、叶える男だと思っていた。

伝えることすら許されない恋が、あるなんて思わなかった。





せめて君が笑っていますように。
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