Short★book

□夢現のその先へ
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「せ...じゅ....ろ?征十郎!!」

目を開けて最初に見えたのは泣きすぎて目が赤く腫れた降旗の姿だった。その顔を見て苦笑いをこぼしたかったのに顔は動いてはくれなかった。
赤司はそれにとてつもない違和感を覚え、しばらく手を顔に当てながら呆然としていた。
降旗はその様子に悲しい顔をしたかと思うと、勢いよく赤司に抱きついた。そして更に涙を零しながらこう言った。

「生き...ててくれて!本当に良かった......!!」

その言葉に赤司の瞳からも涙が溢れた。表情は相変わらず変わらないけれど、感情はそのままなのだ。たくさんの気持ちになることができるし、人の気持ちを感じることができる。

「あぁ、本当に...」

『生きていて良かった。失ったのが命じゃなくて、光樹じゃなくて、表情で良かった。』


そんな風に考えることができるのは、大切な物を知っているから。表情がなくても、気持ちが伝わる相手がいるから。何よりも愛しい人を抱き締めることができるから。





赤司は幸せを噛みしめながら、心の中で微笑んだ。
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