Short★book
□狂気に垣間見た何か
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「光樹、帰ろう。」
「あ、うん。ちょい待ってー」
帝光中学校バスケ部。赤司征十郎。この学校で彼の名を知らぬ者はいないだろう。そんな彼と同じくらい知名度の高い彼は降旗光樹。特に何かに秀でてる訳ではない。バスケは2軍。テストも平均点。先生からの評価は普通の中学生。けれど、彼は有名人。それは赤司の親友というポジションに位置しているからである。2人はいつも一緒で逆に一緒にいないときの数を数えた方が早いくらいだ。
そしてこの2人は一緒に住んでいる。とはいっても2人暮らしという訳ではなく、赤司家に降旗も共に住んでいるという形。昔、早くに両親を亡くした降旗は赤司家に引き取られたのだ。それから2人はまるで兄弟のように育った。
「んー今日も疲れたな・・・」
「そうか?」
「あー征十郎に共感を求めたのが間違いだった。」
ハァっと白い息を吐きながらマフラーを口元までかぶせた。バスケ部の帰りは遅い。陽が早く落ちる冬。彼らの帰る時間ともなれば深夜と変わらないくらい暗い。けれど人工の光が大量に輝き、そんなこと思いもしない。
「なんだ。僕は普通だろ。光樹がだらしなんだ。」
「あーあーそうですね。俺が悪いですねー」
「...........」
「すいませんでした。」
「...........」
「怒った?」
何も喋らなくなった赤司の顔を覗き込もうとしゃがむ。すると先程まで温かかった首元に急に冷気が当たる。
「.....え?」
赤司の手には降旗が巻いていたクリーム色のマフラー。そして悪戯が成功したとほくそ笑む赤司。
「バーカ」
固まった降旗を置いて奪ったマフラーを揺らしながら先を歩く。
ようやく降旗が前に向き直ると、赤司の笑顔が見えた。降旗も軽く笑って赤司に追いつくために走った。