女装しなきゃいけない赤司様!

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翌日駅前9時20分。
『うわーちょっと早く来すぎたかな?でも、待たせるのも失礼だよな。これでいいよな!』
ともうワクワクで待っている降旗の姿が。
しばらくしてそこへ征華がやって来た。
「すいません、お待たせしましたか?」
「いえ、全然!」
実際には30分待っていた。征華がやって来たのは9時50分だった。
「ならいいんですが。さて。」
「?」
「行こうか。」
「へ?」
突然口調の変わった征華に驚く降旗。
「何をグズグズしている。行くぞ。」
そうこれこそが征華の遊び。
こうして征華の姿で征十郎を出すこと。
それをした相手がどこまで自分と過ごすのかということ。
「は、はい!」
事態が飲み込めないままついていく降旗。

そんなこんなでとあるデパートに入っていく2人。
そして目当ての物を見つけては買い込んでいく征華。
「持て。」
という命令に従い荷物を持つ降旗。そうしながらも
『これってどういうことなんだ?会ったときは普通だった。ていうかもしかしてこれが本当は普通なんじゃないのか。さっきまでのが猫被りっていう方が.....』
と必死に状況を整理していた。
それでもトコトコと征華についていく。
征華はそれを横目で見ていた。
『こいつ...........』
始めは困惑していた顔だったが、段々と落ち着きを取り戻していく降旗。
それを見ていて征華は面白くなかったらしい。
「ちょっと休憩だ。」
と喫茶店へ立ち寄った。

しばらく沈黙が流れた。
「.....おい。」
「何ですか?」
もう驚きもしなくなっている。
「何かいうことはないのか。」
「?」
「この態度の変わりようとか!」
らしくもなく怒鳴る征華。
それには多少びっくりした様子の降旗。
「そりゃもちろん最初はびっくりしました。けど段々分かったんです。それが本当の赤司さんなんだって。だから、俺嬉しいです。自分を出してもらえて。」
照れたように笑いながら語る。
それを聞いて征華は固まった。
『...こんなこと言うやついるのか。でも嘘を言っているようには見えない。きっと本心だろう。でも...』
「私は私のままでいてもいいと思うか?」
「?」
「...........」
『僕は今僕でいていいのか?彼の前では僕で.....』
「いいんですよ。赤司さんは赤司さんで。」
涙が出そうになる征華。
思わず下を向く。
「どうしたんですか!?具合でも悪いんですか!?」
心配からか声が少し慌てている。
「大丈夫だ。問題ない。」
「でも.....」
「すまない、少しお手洗いを借りてくる。」
と言い残し席をたった。

『僕は彼の前では僕でいていいようだ。征華.....ごめん。僕はお前でいるのが少しつらくなってきたんだ。だから、僕でいられる時間をくれ。お前であって、僕である時間を。』

征華が戻ってきた。
「あの.....大丈夫でしたか?」
「あぁありがとう。」
『本当に大丈夫みたい。良かった。』
と少し微笑んだ。
その笑みを見て征華は
「敬語でなくていい。」
と言った。
「え。」
「だから、敬語は止めろ。そしてこれからは征華と呼べ。」
超のつくほどの上から目線だ。
「え.....わ、分かった。征華...さん?」
「さんはいらん。」
「それはちょっと...慣れてきたらで!」
困った様子で苦笑いを溢す降旗。
「ま、いい。」
そして笑った。
何とも綺麗に笑った。
降旗と会ってから初めて心から笑ったのだ。
カァァと赤くなり、固まる降旗。
「どうかしたか?」
どうやら無意識に行ったらしい。
「いや、なんでもない!」
と顔を逸らした。

そろそろ別れの時間がやって来た。
「じゃあまたね。」
「あぁ。」
後ろを向こうとした降旗だったが
「おい。」
という言葉に呼び止められる。
「私は1週間こちらにいる。また誘っても構わないか?」
キョトンとした降旗だったが
「もちろん!」
と笑顔で変事を返した。
そして2人は別れた。

『初めてだ。あんなことを言われたのは。』
黒子も征華のことを知っているが、そこまでのことは言ってはくれなかったようだ。

家へと着いた赤司。
「「「「おかえりなさいませ、征華様。」」」」
またもや使用人たちが迎える。
そこへ1人の使用人が征華の元へとやってきて、こう伝える。
「奥様がお待ちです。」
そう、それは赤司の母親のことで。
その言葉につらそうな顔を浮かべる征華。
『行きたくない。けれど、行かなければならないんだ。そのためのこの格好だ。』
ギイッと重い扉が開く。
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