女装しなきゃいけない赤司様!

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「え........」
その言葉に征十郎はもちろん周りの使用人たちも言葉を失った。
その中で1人真実を告げようとしたものがいた。
「奥様...征華様は.....」
その使用人の言葉を征十郎の手が遮った。
「お母様、何をおっしゃっておられるのですか?征華は先日から留学に行ったばかりではないですか。」
笑顔を失ったはずの彼はとても綺麗に微笑んでみせた。
「あら?そうだったかしら。最近物忘れが多くて困るわ...いつまでどこに?」
「アメリカに2年です。」
使用人たちは呆然とその会話の行方を見守っていた。
「ならいいわ。2年以上はいけないけれど。」
征十郎は以前に母親が2年以上の留学は認めないと言っていたのを思いだし、咄嗟にそう嘘をついた。
この時、征十郎は偽りの笑みを手にいれた。

母親と別れたその足で父親の元へと向かい、先程までのことを話した。
「.....そうか。よくやった。2年後のことはまた考えよう。」
「はい。」
「使用人たちに事情を説明しなければな。急遽召集をかけよう。」
「漏れる前に一刻も早くなされたほうがよろしいかと。」
そして赤司に関わる全ての者たちで母親を騙す計画が始動した。
これは断じて彼女を苦しめるための計画ではない。
彼女の心を守るため、壊れるのを防ぐためのものである。

悪いことだと分かっていた。
それでも皆は止めなかった。
それが今は最良の選択だと信じていたから。
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