女装しなきゃいけない赤司様!

□06
2ページ/2ページ

駅前。8時30分。
前回同様、降旗は待ち合わせよりも早くに来て、征華のことを待っていた。
彼の口から白い息が溢れる。

やっぱこの前の征華さんは少し驚いたな。でもなんか嫌な感じはしなかったんだ...なんでだろ?
分かんないけど、あーなんかもやもやする!
なんていうか素の征華さんの方が征華さん自身ていうか...そんな感じがしたんだ。
ていうか俺は何に悩んでるんだろ...んーなんか征華さんって違和感あるんだよな。
時折....悲しそうっていうか寂しそうっていうか...

「すまない、また待たせてしまったね。」
その声にビクッとして振りかえればそこには征華が。
「全然!で、今日はどこ行くんですか?」
先程まで考えていたことを頭の隅に追いやり、朝から気になっていたことを尋ねる。
「そうだな...どこがいい?」
「え?」
質問を質問で返され若干戸惑ってしまう降旗。
「特に決めていなかったんだ。どこでもいい。」
「え..じゃあ遊園地とか?」
「決まりだな。では行こう。」
「え!?ほんとにいいんですか?」
「どこでもいいんだ。さぁ行こう。」
降旗は2つの理由で慌てていたのだ。
1つは自分の意見がすんなり通ってしまったこと。
もう1つは
『遊園地って、なんかデートみたいじゃん!!』
自分で言っておいて何を言ってるんだとお思いの方もいるだろうが、通ると思っていなかったのだ。

1人であわあわと慌てている降旗に対し、征華は速くしろと言わんばかりに歩みを進めていく。
その背中を小走りで追いかければすぐに追い付く。
遠慮がちに少し後ろを歩いていると、チラッと征華は振り向きムッとした表情になる。
そのまま降旗の手へと自分の手を伸ばして握る。
グッと手を引いて自分の隣に引き寄せ、降旗の真っ赤な顔を見て満足そうに微笑んだ。

手を繋ぎながら歩く姿は恋人そのものであった。

このデートは2人を更に近づけることとなるのだ。
まだそのことを彼らは知らない。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ