女装しなきゃいけない赤司様!

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「何乗りたい?」
降旗が遠慮がちに聞いてみれば、んーと首を捻って考え出す征華。
風が吹いて、髪がフワッと持ち上がる。
それはとても美しかった。
降旗の喉が鳴った。征華はそんなことには気付かずにようやく答えを出したのか、ニコッと笑って言った。

「ジェットコースター系を制覇しよう!」

その言葉通り次々と様々な種類のジェットコースターに乗っていく。
人はたくさん並んでいるのにも関わらず、すぐに次の乗り物に乗れているのは、征華の美しさ&威圧感故である。
前に並んでいる客たちは征華たちに順番を譲っていった。



征華はご機嫌な様子でパンフレットを開いて、次の乗り物を選んでいた。
一方その後ろ。降旗がグロッキー状態であった。実はこういった絶叫系が苦手なのだ。
あまりにも征華が楽しそうなため言い出すことができずに今に至る。

『やっばい....もう限界かも......』
フラッと体が揺れたその時、少し前から征華が駆け寄ってきた。

「大丈夫か?」
下から覗きこむようにして心配そうな顔をしている。俗に言う上目遣いというものに、降旗は別の意味でアウトになりそうであった。

「もしかしてジェットコースターとかは苦手だったのか?」
嘘をついてこのまま付き合っていてはいつか倒れると思い正直に実は...と返す。

「なんで言わなかったんだ!」
征華の怒った様子に降旗は驚いた。
『もしかしなくても...心配してくれてる?』
怒っている征華を目の前にして不謹慎だとは思ったが、思わずにはいられない。

『あぁ、すごく嬉しい...』

「おい、聞いているのか!?」
先程よりも声の調子が下がり、降旗は慌てて返事を返す。

「ごめん!なんかすごく楽しそうだったから言うに言えなくて....」

その一言で征華はポカンとしてしまった。

「...私は楽しそうだったか?」
「うん...」
「どうしてそう思う?」
「どうしてって....笑顔だったから。」




『私は笑っていたのか?笑顔だったのか?』



ずっと笑えなかった。ずっと寂しかった。

ずっと楽しくなかった。ずっと嬉しくなかった。

ずっと笑いたかった...



『あぁそうか。こいつと一緒だったから...』

『好きだ.....』



恋への自覚は唐突にやってきて。
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