女装しなきゃいけない赤司様!
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「そうだな...次はゆっくりしたものに乗ろう。」
「ありがとう。」
征華が穏やかな表情で、声で、まるで子供を可愛がるように語りかけてきた。
その様子に若干の違和感を覚えながらも征華の申し出をありがたく受ける降旗。
「何が乗りたい?」
自分では降旗の調子が分からないため、降旗自身に乗れるものを決めてもらおうと思い至り、問いかける。
「えっ!?んーじゃあ観覧車とか?」
ゆっくりたものというのは遊園地では中々無く、観覧車くらいしか思いつかなかった。
「っ!...まぁそれにしよう。」
「?」
征華は一瞬だが少し躊躇った。
先程、降旗のことが好きだと自覚したばかりの征華...いや征十郎にとって好きな人と密室というのは些かよろしくない状況だ。
そして征華であることから少し考えていなかったが、相手は男である。
だが、不思議と違和感はなかった。
まるで初めから想っていたかのように、スッと溶けこんでいった。
しかし征華も観覧車くらいしか乗れるものがないと理解し、渋々承諾した訳である。
ガタンゴトンガタンゴトン
「わー綺麗だね!征華さん!!」
無邪気にはしゃぐ降旗を見て、とても愛しいという気持ちがこみ上げる。
それと同時に悲しくなり、罪悪感を感じた。
彼が呼んだ名は"征華"だった。自分ではないことが悲しかった。
そうして自分は彼を騙しているということに対して罪悪感を感じた。
『僕は征華じゃないんだ...』
不意に観覧車が激しく揺れた。征華は考え事のせいで急なことに体がグラリと揺れた。
それを降旗がキャッチしたのだった。
「...征華さん、大丈夫?」
「あぁ、問題ない。」
そうして1周が終わったところで、2人は観覧車から降りた。
「今日は楽しかった!ありがとう!!」
満面の笑みでその言葉を放つ彼は嘘をついているようには見えなかった。
その様子に征華は1人安堵する。
「私も楽しかった。つき合わせて悪かったな。」
「ううん!」
「じゃあまた。」
「うん、またね。」
そうして2人は別れたのだ。