女装しなきゃいけない赤司様!

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一通り泣き尽くした降旗はトイレへ顔を洗うために向かった。


洗面所に写る自分の顔をみて嘲笑した。

『情けない顔...』

瞼を赤く腫らし、頬には涙と伝った後が残っていた。その様子は大変痛々しいものだった。この顔をチームメイトに見せる訳には行かないと、水を出した。

『この想いも一緒に流れてしまえばいいのに。』

そう考えながら顔を水で濡らし、ごしごしと乱暴に纏わりつく鬱陶しい水を拭った。




消えてしまえばいいと、強く思ってしまうくらいの大きくて、膨らんでいく想いは消えるはずなんてなかった。
消えて欲しいというのは叶って欲しいの嘘吐き言葉。
届いて欲しいからこそ知られてはならないと思う。
受け入れて欲しいからこそ嫌われたいと願う。
人間は嘘を吐く。心の表面を嘘で塗り固めて、心の内側を隠していく。人に見られないようにと頑丈な壁を作る。誰にも知られたくないその絶対領域が壊れる時がくれば、その人が解放されるのではないだろうか。早く壊れろと願いつつ、絶対に壊されてたまるかとさらに壁を厚くしていく。それは自分のためなのだ。人に悪いように思われるのが人間はとても恐ろしいのだ。好かれたい、側にいてほしい。そう思うからこそ自分を出す訳にはいかない。
だからこそ1番に好きになってほしい人には尚更本来の自分を出すことはできない。
そうして手に入れた偽物の愛情は本当に必要なのだろうか。
自分を好きになってくれた訳ではないとういのに、その人は幸せだと笑うのだろうか。
そんなのはダメだと他人はいうのだろう。自分だって同じであるのに。
仮初めの愛を欲しているくせに。嫌われたくないと行動しているくせに。異質だと思われたくないくせに。みんなと同じでいたいくせに。本当の自分がどれかなんて分からないくせに。


幸せは降ってくるものではない。掴むものだ。
それはどうか。
幸せは降ってくるものである。それを掴むかどうかが問題なのである。手を下げていればその幸せは落ちていくだけ。手を伸ばして掴むことができれば幸せを知ることができるのだ。

ただ、稀に神様の悪戯か不幸をつかむこともある。
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